第二話 お稲荷さん
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を掛けていたのは、彼の母親のようだ。白い巫女のような衣装を身につけ、黒く長いさらっとした髪に、優しそうな笑みを少年に向けている。
「また、お稲荷様にお願い事をしていたの?」
「ううん、違うよ。夕方のご挨拶をしていたんだ。」
どこか誇らしげに少年が答える。
「そうなの?イナリは本当にお稲荷様が好きね。」
今度は、彼女が心底愛おしそうに言う。
「うん!だってお稲荷様は、いつも僕たちのことを見てくださっているんだもん。」
少年は嬉しそうだ。
「それにね!この前、おやすみなさいの挨拶をしてたら、お稲荷様が遠くに見えたんだ!」
「あら、ほんとに?」
彼女が目を見張る。
「うん!ほんとだよ!」
彼女は、膝を折って屈み、彼を抱き寄せて ぎゅっ と抱きしめた。
「それはきっと、毎日きちんと挨拶をしているイナリの為に姿を見せてくれたのね。お稲荷様もイナリのこと大好きなのよ。」
「ほんとに?えへへへ、うれしいなぁ。」
彼は嬉しそうで、それでいて少し恥ずかしそうにしている。
「さ、イナリ。お父様をお迎えに行きましょう。」
彼女が思い出したように言う。
「お父様は、今日どちらに行かれてるの?」
彼もてっきり忘れていたかのように、少し困ったような顔をしている。
そんな顔を見て、少し苦笑しながら、
「お父様は今日、火影様に呼ばれてお役所に行っているのよ。」
「だから、お役所までお迎えに行って、そのままお父様と一緒にお買いものをしましょう。」
「今日の晩御飯は何が食べたい?」
彼女が、もう答えはわかってるけどと言いながら聞いている。
「いなり寿司!!」
彼が待ってたとばかりに答える。
「ふふふ、やっぱりね。じゃあ、今日もおいしいいなり寿司にしましょう。」
「やったー!」
境内に嬉しそうな声が響く。
二人は立ち上がり、手をつないで境内を大通りの方に歩いていく。
二人の顔には、見ているこちらがふわっと暖かくなるような笑顔が見える。
コン、コーン。
心地良さそうに鳴く白い狐がいた。
二人を見守るかのように、優しく、暖かく、愛おしそうな眼で二人を見ていた。
夜 木の葉隠れの里 稲荷神社
夜の帳が下りて、境内はうっすらと周りが見えるくらいに暗い。
その境内にも、ご神体を祭るお堂とここの住人が住まう家だけに、ほうっと明かりが灯っている。
家では、何やら話し声が聞こえる。
「今日、火影様に呼ばれたのは“戦争”のことでしたの?」
心配そうに女性が問いかけている。
「ああ、北の国境沿いの小競り合いをきっかけに岩隠れが攻勢を強めているらしい。暗部が工作を仕掛け、全面的な攻勢までは発展しないようにしているが、どうなることか。
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