第二話 お稲荷さん
[1/3]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
第二話 お稲荷さん
火の国歴55年6月11日 火の国 某所の森
―深緑の葉が舞い散り、澄んだ色の小川が流れ、多くの命が生きる森がある。
この森は、とても大きくまるでこの国全体を覆うかのように広がっている。
その奥にひっそりと、まるで何かから隠れるように人の住まう場所があった。
木々に隠れてはいるが、近づけば優に20メートルを超える木でできた大きな壁が見える。
その壁にある大きな門には、「あ」「ん」と両扉にそれぞれが書いてある。
門をくぐると、赤い屋根の家が一階建てや二階建て、それ以上の家屋が並んでいる。
人の住まう家だけでなく、「よろずや」と書かれた店や「八百屋」、「金物屋」など多種多様なものもあるようだ。
そこにいる人をみれば、道端で話すもの、お店で買い物をするもの、どこかに急ぐもの、
売り上げを稼ごうと商いをするもの、多くの人で賑わい、この壁のうちが活気よく、楽しく生きているのが分かる。
ずぅっと北の方をみると、大きな岩山が見えるが岩には人の顔が3つ彫られている。
それぞれが、誇らしく凛々しく、人たちを見守っている。
―ここは火の国 木の葉隠れの里である。
“忍”として、忍術、体術を操り、軍事力として国を守る、そういう人間たちが集まり、暮らしている隠れ里だ。
その木の葉隠れの里の奥深くにより鬱蒼とした森がある。
そこに一つの神社が厳かに佇んでいた。
その神社はそれほど大きくない。境内に入る入口には大きな赤色の鳥居があり、両脇に守るかのように狐を象った像がある。境内は中央奥にご神体を祭るお堂、東に住居があり、西には大きな楠木と倉庫がある。ところどころに狐の象がある。空気はとても澄んでいて、ここだけ別の場所のようである。
―お稲荷さん―この愛称で知られている油揚げが大好きな“狐”の神様を祭る神社である。火の国では、“火の意思”と言われる里を支えてきた先人達からの強い意思を受け継いでいくものを信仰している。それと同じように昔から人に愛され、無病息災や家内安全、豊作など生活に関わることで信仰されてきたものが、−お稲荷様―であった。
同年同月同日 夕方 木の葉隠れの里 稲荷神社
パンパン
柏手を打つ音が境内に広がる。
音の鳴る方をみると、木で彫られたお稲荷様の象の前に、一人の少年が目をつむり手を合わせている。
その容姿は、黒い短髪で少しとげとげしているようではあるが、さらっとした髪と人懐っこい愛らしい顔が目につく。
齢は、5歳ぐらいであろうか。
熱心に手を合わせている。
「イナリ、ここにいたの?」
暖かい、ゆらりとした声が聞こえる。
はっと少年が振り返る。
「お母様!」
少年がその声の主を見つけ、駆け出していく。
声
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ