第一話 プロローグ
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小さな池を作っている。
その上に、ごろりと長いモノがー腕が転がっている。身体とつながっているはずのものが。
一方では、ゴォオオっと火を噴いている“人”がいる。
「あ゛ぁぁあ゛ぁぁあ」
その火に巻かれた“人”が暗く、黒い悲鳴を漏らす。
嘔吐を誘うような、鼻の奥を突き刺すようなにおいが立ち昇る。
パンッ!
風船が破裂したような音が鳴る。
“人”であったものの首から上がない。そこからは血が噴水のように噴き出している。
あちらこちらから悲鳴や怒号が聞こえる。
爆発する音や何かが切れる音、何かかが折れる音、鈍い金属の音、薪が燃えるような音、色々な音がやまない。
腕のない“人”、頭がない“人”、黒く炭化した“人”、半分に分かれている“人”、その他にも”人”が転がっている。
―空に黒く澱んだ雲が漂っている。
さんさんと眩しかったはずの光は隠れている。
―深緑の葉は、舞うこともなく、地面に落ちている。
青いにおいを乗せていた風は、流れることなく、その場に漂い濁っている。
澄んだ藍色の川は、その色を赤黒い色が侵している。
―ミンミンミンと騒がしかった蝉は鳴いていない。
チュチュっと愛らしい声で鳴いていた色とりどりの小鳥はいない。
キキっと可愛い鳴き声を上げていた茶色のリスも姿が見えない。
のそっと少し億劫そうに歩いていた鹿は横たわっている。
その傍には、小さい鹿が横たわる鹿に顔を擦りつけている。まるで寝ているのを起こすかのように。
―この森は平和だった。
命を削り合い、お互いがお互いを敵と認識している。
お互いがお互いを傷つけあっている。
お互いがお互いをきっと・・・・
“きっと” この言葉の先は言えない。
森にいた命には言えても、“人”には言えない。
“人”は、奪い合う存在だから・・・・
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