第百五十二話 近江平定その十
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「どうもな」
「このままですと一向一揆も折角起こしたというのに」
「あまり派手になっておりませぬ」
「派手にならないまま終わりそうです」
「無念ですが」
「こうなれば越前ではやり方を変えるか」
ここでこう言う声だった。
「少しな」
「といいますと」
「ここは」
「越前に出す影はこれまでよりも遥かに多くしてじゃ」
「織田家をですか」
「滅ぼしますか」
「それを狙うか、それで織田信長を滅ぼせればよい」
ひいては織田家をだというのだ。
「だからな」
「越前、加賀ではどんどん攻めますか」
「そうしますか」
「摂津に行けば本願寺も織田家も本気で殺し合うだろうがな」
しかし織田家は今は摂津に向かっていない、それで言うのだ。
「しかし越前、加賀に行くのならな」
「その国で、ですか」
「潰しますか」
「うむ、あの二国の鉄砲はどれ位じゃ」
「千程です」
一人がその数を答えてきた。
「他の国よりは多いですが」
「ふむ、千か」
「そして影の数はどれだけ出しますか」
「出せるだけ出すのじゃ」
数に再現はつけないというのだ。
「よいな」
「わかりました、では」
「武器もあるだけな」
出すというのだ。
「わかったな」
「さすれば」
「越前、加賀では大戦ですな」
「我等も姿は見せぬが」
それでもだというのだ。
「加賀に行くぞ」
「そして、ですか」
「影、いえ闇からですか」
「そうじゃ、仕掛ける」
まさにそうするというのだ。
「出来ればここで織田信長だけでも仕留めたい」
「最も厄介な男をですか」
「越前で」
「顕如も厄介じゃがな」
今その信長と争っているもう一方の男もだというのだ、彼等にとっては不倶戴天の敵の一人だというのだ。
だが共倒れに出来ぬのならばだ、まずはというのだ。
「まだ織田信長よりはましや」
「あ奴はやはり」
声の一人が問うて来た。
「日輪ですな」
「間違いなくな、青天の日輪じゃ」
それに他ならないというのだ。
「日輪は我等にとって最大の敵じゃ」
「光そのものであるが故に」
「闇である我等にとっては」
「まつろわぬ、それは即ち闇」
「闇にとっては」
「だからこそ何とかする」
信長、彼をだというのだ。
「ここでな」
「では共に加賀に参りましょうぞ」
「我等の総力を決してですな」
「十二家の」
「宮中にいる者にも声をかけよ」
そこにもだというのだ。
「よいな、高田家の者達にもな」
「長老、麿はもうおりますぞ」
闇の中から若い男の声がしてきた、口調は雅なものであるがそこには得体の知れぬ不気味さが備わっている。
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