幕間〜想いを馳せる賢狼、野望進める店の長〜
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が掛かった甘味をもっと作って欲しいのじゃ!」
長い金髪に甘ったるい声、豪著な服からはどこぞのお姫様である事が分かる。彼女は袁術――真名を美羽。袁家の二代当主の一人である。
店長の腕をがっしと掴み、お菓子をねだる姿は年相応のモノ。街の往来での可愛らしい少女のわがままに、道行く人は微笑ましそうにその様子を眺め始め、結構な人だかりが出来はじめていた。
「そんなに甘いモノを食べちゃうと歯が痛い痛いになっちゃいますよぉ?」
「むむ……それは嫌じゃ。しかしのう……最近は田豊の言いつけで蜂蜜水も薄味のしか飲んでないのじゃ。この出店は今日だけと言っておるし、ちょっとくらい……許してたも」
うるうると目に涙を溜めて俯く少女に訴えられては、御付きをしている女性も頭を悩ませる……事はなく、目をきらきらさせて美羽を眺めていた。
美羽の困る姿を困りながらも嬉しそうに見やる御付きの女性の名は張勲――真名を七乃。彼女は袁術軍の総司令官であり、女性にして幼女趣味を持つ業深き人物だったりする。
店長は二人の様子を眺めながらどうしたモノかと思考を巡らせ、
――いろいろな人がいるモノですね。しかし集客効果はあったようですし、ここはお礼と今後の為も兼ねて少しだけ分けてあげてもいいかもしれませんね。楓蜜は私含めて三人しか作り方を知りませんし。
纏まった所で優しく微笑み、少女と御付きの女性に一つの提案を行う事にした。
「そこまで気に入って頂き、作った私も嬉しく思います。可愛い女の子の頼みを聞かないのも悪いですし……甘味の素材が無いので『めいぷるしろっぷ』の小瓶を一つだけお分けしましょう」
驚愕に目を見開く七乃であったが、美羽はバッと顔を上げ、少しずつ食べるのなら虫歯にもならないと理解し満面の笑みに変わった。
「おお! お主、話の分かる者じゃの! 七乃、分けて食べるのなら問題ないのではないかえ?」
くいくいと嬉しそうに七乃の袖を引く美羽であったが、どうにも七乃は煮え切らない表情をしていた。そして訝しげに小さな声で、
「でも、お高いんでしょう?」
店長に対して不安の種を口にする。
自分も食べたが、蜂蜜よりも濃厚で甘く、女性を虜にするようなその蜜はとんでもない値段ではないのかと彼女は予想を立てていた。
「いえいえ、それがなんと大特価! と、いいたい所ですが特別に無料で差し上げましょう。この地に私の店が建てられた時にまた来てくだされば構いませんので」
一瞬呆気に取られるも、七乃は商売上手な店長の発言に苦笑し、お礼を言って小瓶を受け取って、
「美羽様。この店の甘味のおいしさを街の人に伝えたら、ちゃんとしたお店を建ててくれるかもしれませんよ? そうなれば……たーっくさん食べられますねぇ」
店
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