幕間〜想いを馳せる賢狼、野望進める店の長〜
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終わってすぐ。都に出すのを止めた所を見ても、その助言をしたモノは乱世の先を読んでいたのだと少女だけは気付き、畏怖と歓喜に震えた。
同時にその少女――司馬仲達は胸を焦がす。自分と同じように乱世の先を読める存在に対して。その者の名を店主から聞いた時、意味の分からない軍への所属に疑問が浮かぶも、その理由が覇王を外部から抑える為では、と予測した。
店を後にして幾日。仲達の妄想はもはや止まらない。ありとあらゆる興味が一人の男に向けられる。
家にいても考えるのはその男の事ばかりで、疑問だらけの思考に陥ってしまった。そして引き籠りの仲達は世間を知らないが為、悶々と悩み続けたのちに暴走していく。
――これは天命。私に、その人と共に世界を変えろと言っているんです。
しかし仲達の元には望まない勧誘が来てしまった。董卓討伐の後、覇王は貪欲に人材収集を行っていた。張り切り過ぎた荀ケが部下である姉に探りを入れ、妹である仲達の引きこもりを心配していた姉は名前を出してしまい、さらには自分より上であると示してしまった為に仲達にもお呼びがかかってしまった。
そんな仲達はまだ誰の元にも仕えるつもりは無い、と書置きを残して逃げた。唯一、仲達が彼との接点を持てる場所へと。後に務める事になると店長から彼の逸話を聞き、己が妄想で美化しながら憧憬を深めて行った。覇王が店に来る日は店長が内密に教えてくれるのでまだ見つかってはいない。
覇王の勧誘を受けても良かったのだが、戦場でしか出会えなくなってしまうと思い、彼女は彼の過去と乱世の情報を集めながら様子を見る事にしたのだ。
そして今、時は来た。
彼女は裏で一つの糸を引く。
今は遠き地でもがいている一人の男の隣に立つ為に。
†
覇王に相談した所、建業に視察に行ってみてはどうかと言われ、店長はその場所を訪れていた。
途中、馬車と旅の資金を捻出するので同行させてやって欲しいと依頼され、眼鏡を掛けた一人の軍師を降ろしたのだが、二日後には迎えに行くつもりである。
ちなみに今回、彼の店『娘娘』の給仕達を幾人か連れてきている。その理由は突発的な出店で人々の反応を見る為と……護衛の意味も込めて。
広く知られているわけではないが娘娘の給仕達はそこらの兵よりも武力の高い者が多い。
乱世では『戦うコックさん』がいる店の方がお客も安心して食事が出来るから、という一人の男の助言を聞いてである。
暴漢程度ならば店長一人でどうとでも出来る。しかしさすがに料理の最中に諍いを起こされると彼には何も出来ないので結構助かっていたりする。
そんな給仕達が出店にてはきはきと客引きを行う中、店長はその横で一人の少女にべったりと懐かれていた。
「のうのう! もっとくりゃれ! この『めいぷるしろっぷ』とやら
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