幕間〜想いを馳せる賢狼、野望進める店の長〜
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王の元からたまに帰ってくる姉の話を聞いて大陸の動きを予想する程度の事が趣味であった。大体が少女の思考と重なっていく為に答え合わせ程度でしかなかったが。
そんな折、会話の中に一つの店の話が上がった。
覇王が足繁く入り浸る店。その店は今まで見たことも無い料理を幾多も取り揃え、訪れた全ての人に幸せを与えるという。
――なら、この私にも幸せというモノを教えてみせて。
ほんの少しだけ興味が湧いたので親に頼んでみると、引き籠っていた娘が外に興味を持ったことに大層喜び、親は少女をその店に連れて行った。
大して期待はしていなかったのだが、彼女は入るだけで驚愕する事となった。その店は全てが異常であった為に。
「いらっしゃいませご主人様、お嬢様!」
笑顔で出迎えてくれたのはひらひらのフリルのついた可愛らしい給仕の服を着て髪を二つに括った少女達。入店と同時に自分の主だと言い放つそれらは服装にしろ行動にしろ少女の予想の範疇を軽く超えていた。
予想外の出来事に口をあんぐりと開け放ち、驚くこと数瞬、奥から出てきた年齢の分かりにくい男が司馬家の面々に挨拶を行う。
「ようこそおいでくださいました司馬御一行様。私は店主の高順と申します。今回は『ふぁみりぃこぉす』でお持て成し致しますので奥のお部屋にどうぞ」
奥の広い部屋に案内され、円卓の机に座り、まず驚いたのはいきなり小鉢を出された事。
お通しと呼ばれるそれは前菜の役目らしく、来てくれたお客には無料で出すらしい。
野菜が盛りつけられただけであるように見えるそれは、塩が少量ふってあるのかあっさりとしていて食べやすく、少ない量は次の料理はまだかと訴える腹を作り出す事が予想された。
なんとなく一口だけに留めておき、少し経つと空の小皿を目の前に並べられ、特大の皿で料理が運ばれてきた。
数多くの種類が所狭しと並ぶその皿は、よく見ると一つ一つの料理が区切られていてクルクルと回るようになっている。
――なるほど、これならどの位置に座っていても好きな料理を目の前に持って来れます。
少しその知恵に感嘆の息を漏らして食事を始めようとしたが、店主から一つの忠告をされる。
「食事とは和です。人と人との関係性が料理に最高の味付けを齎します。どうぞ、会話をしながら食事をお楽しみ下さい。ここではそれが欲しい、あれが欲しいとけんかをしてもいいのです。ふふ、取り合いになるほどの料理を作っていると自負しております故。私の料理がおいしくなければ、お代はタダで構いません」
驚愕。誰しもが店主の発言に度肝を抜かれた。
しかし少女は驚いた箇所が違い、語られた事のズルさに対してであった。
どれか一つでもおいしければ成立し、どれか一つでも好みに合わなければ成立しない。そんな矛盾だらけの提案
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