幕間〜想いを馳せる賢狼、野望進める店の長〜
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理人にしたいと望むほど。
つまり、彼女は幽州の公孫賛は負けると言っているのだ。軍に所属するでもなく、裏からの情報があるわけでも無いというのに。
どのような思考を行えばその結果に辿り着くのか店長には分からない。だが、その少女が覇王自ら手を伸ばす程の頭脳明晰さである事を重々理解しているのでその判断を事実として受け止める。
彼自身、思い入れの深いあの地が戦火に沈むとなると心に怒りと悲哀が湧く。友が危機に瀕し、敗北すると言われれば激昂もする。それでもこの店は彼の城であり、彼はその主である店長。白蓮が家を守るように、彼も店の存続を選択しなければならない。
「そうですか。なら……違う地に支店を立てる為の視察に行きましょうか」
冷たいと誰もが思うだろう。しかし彼は一人の料理人。食材調達の為に山に入ったりもする為、一般の兵と比べて身体能力はかなり高いがそれでも武人では無い。戦に彼一人が参加した所でどうにもならず、喚いても何も変わらない。
淡々と語られた返答にほっと息をついた仲達は、彼の覚悟を見てもう一つ自身の知恵を授ける事を決める。
「覇王に、相談するといいでしょう。利用される、とは思わない事です。てんちょーの望みにはあれの協力は絶大。汚い話、では無くただの利害の一致としておけばいいです。それと、相談の時に呼子の三姉妹のお礼を言っておくといいです」
「助言ありがとうございます。丁度あの猫耳軍師様の所に届け物がある為、ついでに話しておきましょう。今日の予約のお客様の要望は『しちゅー』『ちーずはんばーぐ』『ぐらたん』後は麻婆豆腐と天津飯です。ぐらたんは新作なので作り方を副店主に同時に教えますので前準備だけしておいてください」
彼女の得体の知れなさに畏怖の感情が支配する中、店長はその子に今日のメイン客に出す献立を伝え、魔法瓶と呼ばれる、温度をある程度保つ容器をその手に引っさげて店の扉を潜っていく。
見送り、一人廊下に残った少女は虚空を見上げてぽつりと言葉を零した。
「……早く会えるならなんでもします。つまらない世界を変えてくれた人」
†
その少女は灰色の世界に居た。
全てがつまらないゴミ同然だった。
何をしても世界は変わらない。いつでも、いつまでも同じ事を繰り返していく。
少女の家はある程度の生活がある為に悲劇など遠い存在でしか無く、安穏と暮らして行けばそこそこの平穏は手に入る事が約束されていた。しかし彼女の頭は良すぎたのだ。彼女の明晰な頭脳は己が未来の姿を簡単に弾きだしてしまい、元服と同時に全てを諦めた。自分が世界を変えよう等とは思わなかったのもその原因ではある。どうせ死んでしまえば全ては同じ、誰かが壊して誰かが作る繰り返しでしかないのだから、との結論に至って。
外に出る事もせず、覇
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