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久遠の神話
第八十二話 四人への準備その十一

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「この戦いで。何としても」
「そうなのですね」
「そうです、ですから」
「僕達の戦いではなく」
「私達の戦いです」
 女神達のだというのだ、お互いに弓矢も槍も手にすることはないがそれは明らかに戦いだというのである。
「それを果たします」
「剣士同士の戦いではなく」
「神々の戦いです」
 特に聡美即ちアルテミスとセレネーのだというのだ、月の女神同士の。
「戦いならば勝ちます」
「何をしてもですか」
「善の神々の中で許された範囲内で」
 そうした制約はあるがそれでもだというのだ。
「必ず勝ちます」
「では僕達はもう」
「見て戴くだけになれば幸いです、ですが」
「それでもですね」
「そうしたことにはならない様に全力を尽くしています」
 このことはその通りだ、だがそれでもだというのだ。
「しかし私達がしくじった場合は」
「その時はですね」
「申し訳ありませんが貴方もです」
「戦わなくてはならないですね」
「その場合は生き残って下さい」
 何としてもというのだ、剣士同士の戦いになった時は。
「そして貴方の願いを適えて下さい」
「わかりました、それじゃあ」
「ではです」
 ここまで話してだ、そのうえでだった。
 聡美はまた弓矢をつがえた、そうしつつ己の的を見据えつつ二人に言った。
「今からまた弓矢を放ちます」
「そうですか」
「御覧になられますか」
 的を見つつ二人に問う。
「今は」
「ええと、今は」
「もう」
 話は終わった、それでだと答える二人だった。
「これで」
「私達は帰らせてもらいます」
「そうですか、それではですね」
「今日はこれで、ですね」
「お別れですね」
「そうなりますね、では帰り道に気をつけて下さい」
 聡美は人間の友人達にこうも述べた。
「くれぐれも」
「怪物、ですか」
「それが出て来た時に」
「いえ、交通事故です」
 話すのは戦いのことではなかった、日常でのことだった。
「それにはくれぐれも」
「交通事故ですか」
「そのことについてですか」
「この世の危険は戦いだけではありません」
「そうした日常にもですね」
「危険なものがありますよね」
「そうです、戦いに生き残ることが出来ても」
 それが出来てもだ、日常の中の危険を逃れることが出来なければそれでは結局同じだというのである。
「ですから」
「そうですね、最近忘れていました」
「私もです」
 上城だけでなく樹里もだというのだ、このことは。
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