暁 〜小説投稿サイト〜
アセイミナイフ -びっくり!転生したら私の奥義は乗用車!?-
第15話「私、とりあえず宿屋」
[1/6]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
その日の食事は豪華なものだった。宿の賄いはやはりつくしにとっては貧相なものだ。

当然のように日本の飽食時代に慣れていたつくし、イダにとってこの世界の食事は

結構どころじゃなく貧相だと思えていた。もう既に慣れているものとはいえ、

こうした街の出店やレストランでもなければ、それなりものが食べられないのは確かに

もったいないと思っていた。家に帰ったら、私が知ってるレシピをお母さんに教えようか。

イダがそんなことを思っていると、ストランディンから声をかけられた。

「大丈夫?なんか考えこんでるみたいだけど」

「あ、いやなんでもないわ。ちょっと、思うところがあて」

心配そうに覗きこむストランディンにそう答えると、木のスプーンを使って

目の前の肉と豆のスープを掬う。ほんのりと塩味のするスープは、彼女が前世のそれよりも

随分と薄く感じられた。無論、つくしではなくイダとして十分な味だとも思ったが。

…そういえば、元の世界でこの文明レベルだとスプーンは取り分け用しかなく、

スープは具を手づかみで食べて、スープそのものは口をつけて飲むようなものだったはず。

しかし、普通にカヴェリでもプロイスジェク全体でもこうした木製のスプーンや、

鉄製、銅製のフォークが一般的に用いられていた。

また、それだけではなく箸やレンゲなども用いる。それこそ、日本のあの時代のように。

これは不思議だな、と彼女は思った。

「あの、すいません。こういうフォークとかスプーンっていつぐらいから広まったんですか?」

その言葉に、そんなことも教えてないのか、と一瞬リックに冷たい視線を送って

ドライベールはニコやかに答えた。

「大凡300年ほど前、我が国の初代皇帝ロイヒテンド帝が広めたと言われております。

最初は毒があると信じられていた鉄や銅を口に入れることは忌避されていましたが、

その便利さがわかると徐々に広まっていったということです」

彼の言葉を捕捉するように、向かいの席に座っていたフェーブルが話を始める。

「かつては西方の国々と同じく手づかみで食べるものが多かったのですが、

やはり初代皇帝が提唱し、ある精霊使いによる「病の精霊」の発見以来

その対策を練ることが求められました。そこで錬金術師や魔素魔導師が様々な実験を

行った結果、病の精霊を食べ物に付けないためにはこうした食器を使うのが一番だと

わかり、こうしたフォークなどの導入を国策として始めたのです。

残念ですが、何にその病の精霊が付くのかがわからないので、

抜本的な対策はとれてはいませんが、以後お腹を壊す人は大分減ったということです」

上品にライ麦のパンを裂きながら言う彼女の齎
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ