暁 〜小説投稿サイト〜
アセイミナイフ -びっくり!転生したら私の奥義は乗用車!?-
第12話「私、保留にしてみる」
[1/6]
[8]
前話
[1]
次
最後
[2]
次話
暫しの沈黙を経て、口を開いたのは短髪の少女の方だった。
ストランディンは意を決して、「実は」と言葉を紡ぐ。紡いだ言葉は絞るように響く。
「父さんの領地、今、ちょっとやばいことになってるんだ」
そう言って、唇を噛み締める少女の様子に、フェーブルが拳を握り締める。
「…全部、去年の雪が悪いんだ。去年の豪雪のせいで…」
「…」
イダは沈黙を守り、次の言葉をその沈黙で促した。その沈黙から紡がれた事情は、
彼女の想像以上にめんどくさそうなものだった。
紡がれた言葉に描かれた情報の数々。それは…
彼女の父親は領地の税制の改善に務めていたこと。
特に先年は豪雪が予測されたため、税をかなり軽減したこと。
そして、そのために現在男爵家の財政は火の車であること。
税制の改善に長年務めていた結果、そもそも財政は苦しかったこと。
税制の改善は帝の指示で、ウヴァの街を中心とする彼女らの父親の領地は、
そのテストケースとして選ばれていたのだと。
その成果は…今のところ、芳しくはないこと。
更には改革そのものを、中央の官僚たちに疎んじられていたことを語った。
「帝の許可が特別に与えられていたことが、中央の官僚貴族の癇に障っていたみたいです。
そのせいで、こんなことに…帝は、父に信任を与えているというのに…」
悲しげに言う黒髪の少女に、イダはそのボサボサの黒髪を手で漉きながら続きを促す。
「―――こんなこと、って…?」
彼女の言葉に、フェーブルは頭を振って答えた。瞳に静かな怒りを湛えながら。
「…税制改革に反対する有力貴族…ゲンナジー公爵から、ストランディンへの縁談が
持ちだされているのです。男爵家への財政援助と引換に。
おそらく税制改革を実施する父に釘を差すためでしょう。
それだけで改革の足は遅くなってしまいます。
その上でやがて父が死ぬ、或いは弱ることとなれば改革は失敗…
我が男爵家はウヴァの街の町長を解任され、中央に戻されてしまうでしょう」
悔しさと怒りをにじませてそういう彼女は、更に続けた。
そもそも、この国は他国より遥かに技術的な面では突出していたが、それは技術のみで、
税制等については…つくしの知るかぎり、室町時代の税制に近いものであった。
近世税制に移行していないせいで、おそらくは国の財政面で厳しい部分が
出ているのだろう、と推測されるのだがはっきりとはしない。
その改善を帝…プロイスジェクの皇帝は命じたのだろうが、官僚貴族、そして旧来制度の
継続を望む領主貴族たちには邪魔なものでしかなかったのだろう。
「そこにきて父の病です。最早、我々にはゲンナジー公が仕組んだものと
[8]
前話
[1]
次
最後
[2]
次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]
違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
しおりを解除
[7]
小説案内ページ
[0]
目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約
/
プライバシーポリシー
利用マニュアル
/
ヘルプ
/
ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ