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アセイミナイフ -びっくり!転生したら私の奥義は乗用車!?-
第10話「私、初めての実戦」
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。「石礫(ストーンブラスト)」と呼ばれる魔術だった。

ノッカー、もしくは土の精霊ノームの力を借りて

数個〜数十個の「当たったらとても痛そうな石」をぶつける術だ。

力の強い精霊使いともなれば、人が死ぬような石を弾丸の様に打ち出すことも出来るが、

今のイダには怯ませるのが精一杯。

どちらの魔術も、イダが「なんとなくこういう魔法ならあるだろう」と呼びかけたのだが、

うまく行った。ガッと音がして盗賊の頭の頭部と光の矢が刺さった腕に石が衝突する。

「ぐわっ!?」「きゃっ!?」

なんとか短刀を保持していた手も、痛みと衝撃に耐えかねそれを取り落としてしまった。

フェーブルの肩にも一発当たるが、

フェーブルはそれに怯むことなく好機とばかりに彼の腕を振り払う。

振り払って全力で盗賊から離れ、走り寄るストランディンと抱き合った。

「ストラ!」「フェーブル!!」

彼女らはそのままイダの後ろに下がり、ストラは手甲をはめ、フェーブルも杖を構えて

魔法の詠唱を始めていた。

「…精霊魔術だと…!まさか、やはりあの依頼主の言ったことは…」

その時、後ろの喧騒が不意に止んだ。決着は着いたのだろう。

おそらくは、彼の部下の敗北で。

あのグラスランナーはともかく、剣士の方は生半なことでは倒れそうにない。

「まだヤル気!?」

イダは叫ぶ。その手にはバッグ。これ以上近寄れば、まだ中に入っているはずの

シングルベッドをぶちかますつもりだった。

それを見て取ったのか、彼は舌打ちして短刀をしまった。

ふん、と鼻を鳴らして盗賊の頭は闇に溶け消えるように「…覚えていろとは言わん」と

捨て台詞を吐いて去っていった。

「行った…か。はぁ…」

息を吐いて、イダはへたり込んだ。辺りには盗賊たちのものであろう血臭が漂う。

「…これが…戦い…」

イダはそう呟いて、うつむく。危機に陥れば戦えることがわかり、嬉しい半面、

自分の力で人を傷つけ、いや、おそらくはまた…殺してしまい、

父親が目の前で人を殺したことについて煩悶しそうになる。

「―――仕方ないものは仕方ない。やらなきゃやられてしまうんだから」

追いついてきた父親と友人の顔を見ながら、彼女は誰にも聞こえないようにそう呟いた。

…15年この世界で生きてきた彼女の倫理は、もう現代日本のそれよりも、

この世界の、幻想の支配する『女神の星』の常識に彩られていた。



数刻後。

冒険者の中継点に駐在する警備兵に斃した盗賊たちの件を話し終え、

イダたちは中継点の街並みの中を歩いていた。

…盗賊たちは、リックが暴れすぎたこともあり、一人残らず死んでいた。
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