第八章 『魔帝』
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そのスパイゴーレムには、他のスパイゴーレムが見ている映像が映し出されている。それをみたダンテは、同じ様にニヤリとした。
「ビンゴだぜ、譲ちゃん」
朧げな陽炎をあげてぽつんと浮かんでいる、大きな鏡のようなもの。間違いなく『魔鏡』である。
「それでは皆さん、行きましょう!」
ようやく行き先が決まり、ネギが陣頭をきって歩を進めた。そんなネギの背を刹那はもの憂いげに見つめていた。
※
深く沈んでいた意識がゆっくりと戻ってきた。肌を締め付けるような寒気が、一層意識を覚醒させる。
意識の輪郭がハッキリとしていく中で、フェイトは自身が気絶していた事を悟った。ネギとの全力の戦いで、さしものフェイトも魔力を相当消耗したようで、常に張り巡らせていた障壁が消えていた。
「無様だな……」
自虐するようにフェイトは呟いた。あちこちに痛みがはしる体に、まだ朧気な意識。今の自分の姿を形容するに相応しい言葉だ。
倦怠感の残る体をなんとか奮起させて立ち上がるが、なかば無理やり立ち上がったためかふらつき、倒れそうになる。フェイトはフラフラとそばに生えていた氷柱にもたれかかった。
辺りを見回すと、一面、氷の世界と言うのが相応しい光景だ。地面は凍りつき、氷があらゆる方向を氷が埋め尽くしている。
ただ一箇所だけ、フェイトが倒れていた所だけが土色の地面が露わとなっていた。
「これは確か、『闇の福音」の魔法か」
迷宮のように入り組んだ氷の世界の中、フェイトはゆっくりと歩を進めていく。意識を失う前に自身がみた光景は、ネギ達へ加勢に来た者達の中にいた吸血鬼が、聞いたこともない大型の魔法を放ったところだ。
「流石は吸血鬼の真祖と言ったところか」
それは純粋な感想だ。創造神である造物主によって造られた使徒を、いとも簡単に氷漬けにしたのだ。それも一人や二人ではない。あの場にいた使徒全てだ。
氷漬けされた使徒達とすれ違う度、そう思わざるを得ない。
そして同時に、なぜ自分は氷漬けにされていないのか? という疑問も浮かんでくる。気絶していた為だろうか、とも考えたが、あの吸血鬼の真祖がそんなお粗末な魔法を構成しないだろう、と否定する。なにか理由があるのか、思考を巡らせるが答えは出てこない。
考えながらも歩を進めていたフェイトの足が止まった。
「セクンドゥム……」
フェイトの視界に入ってきたのは、他の使徒と同じく氷漬けにされた、セクンドゥムの姿だ。氷の蔦に絡め取られ、苦悶と恐怖の表情を浮かべながら凍りついている。
それを見たフェイトは、溜飲が下がる思いだった。そして同時に戸惑った。今フェイトの中に浮かんだのは紛れもない”感情”で、造物主の使徒として
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