第八章 『魔帝』
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があった。間違いなく強大な力を持つであろう相手と相対するのに、少しでも知っていることは多い方がいいからだ。
「そうだな、この上ないクソッタレのスライム野朗ってところだ」
だがダンテから出てきたのは、有用な情報というよりも個人的な罵倒だった。ネギ達としては、もう少し違ったことを期待していたわけだが。ダンテもそれは分かっているのだろう。一度間をおくと、再び口をひらいた。
「ヤツはそこらの悪魔とは文字通り次元が違う。命どころか宇宙すら創り出せる。無から有を創り出す、まさに神サマ創造主サマってヤツだ」
ダンテの説明に、ネギは合点がいった。
ムンドゥスという言葉は、ラテン語では世界や宇宙を意味しているが、なぜそのような大業な名を冠しているのか。なんのことはない。神の所業に類する、『創造』という力所以なのだ。
「文字通り存在が世界そのものって訳ですね」
「ふーむ、聞けば聞くほど出鱈目な相手でござるなぁ」
楓はもはや感嘆の言葉を漏らした。それもそのはずだ。これから相手取ろうとしているのは、創造という規格外力を持った化物であり、造物主もまた、創造主としての力をもっている。
つまり、二柱の創造神を相手にしようとしているというわけだ。正気とは思えない、というのが普通だろう。それは他の者たちも少なからず感じていた。話を聞けば聞くほど、彼我の戦力差を感じずにはいられない。
勝算はあるのか? そもそも勝負になるのか? そんな考えが浮かばずにはいられなかった。ネギさえも、ダンテへそれを聞こうかどうか迷いが生まれていた。だがそれはしてはならない。なぜならネギは彼女らのリーダーであり、その問いかけは士気を下げるだけだからだ。
「大丈夫です!」
そのためネギは不安を隠し、皆を安心させようと気丈に振る舞う。
「マスターやコタローくんだって動いてくれていますし、ダンテさんだっています! 皆の力を合わせれば必ず勝てますよ!」
とは言ってもネギはまだ十歳なのだ。仮面を被り、役を演じることは出来ても、気持ちは殺しきれていないようだ。もっとも、とても十歳らしからぬ大人顔負けのものだが。
「そうだな。ムンドゥス共々、さっさと終わらせてやろうぜ。頼りにしてるぜ?」
ほんの僅かな人の機微に反応しなければならない稼業に身を置くダンテは、ネギのそれが虚勢であることに気が付いていた。だが、ここはその虚勢に乗ることにした。それはダンテにも分かっていたからだ。これは厳しい戦いになる、と。
「それじゃあ早速頼ってもらおうかなー?」
取材ノートを仕舞った朝倉が、ニヤリとしながらそう言った。朝倉の手元には、アーティファクトのスパイゴーレムがある。
「ダンテさんが言ってた『魔鏡』ってのはこれのことじゃない?」
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