第八章 『魔帝』
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か」
握られたダンテの拳は、憤りを噛み殺すように小刻みに震えていた。兄であるバージルとは殺し合いをする仲だった。それでも、実の兄だ。死してなお弄ばれることを良しと出来るはずかない。
「そうだ。次は母を作ってやろうか? いくらでも作ってやろう」
それを聞いたダンテは、声色が変わっていた。小さく吐き捨てただけだが、噛み殺していた情感は曝け出され、自然と溢れていた。
「つくづく反吐の出る野朗だ」
その目に宿った感情にネギは気付いた。怒り、殺意、後悔。負の感情がめまぐるしくダンテを染め上げていくようにネギには見えた。しかしネギは、負の感情の中であっても、揺らぐことのない存在に気が付かなかった。
それは偉大な父から受け継いだ『誇り高き魂』だ。その魂が、正義を叫ぶ。もはや仇をとるためだけではない。世界をムンドゥスの好きにさせてはいけない。
赤い三つの妖光を指さしダンテは布告する。
「今度こそケリをつけてやるよ! ムンドゥス!」
魔帝と悪魔狩人との戦いが、再び幕を開ける。
その宣戦布告に、ムンドゥスはただ不敵な笑いを残し消えていった。
ムンドゥスが去ったあと、はじめは誰も口を開かなかった。だが誰もともなく近くの岩場ヘ集まり、ダンテの話を聞くこととなった。
魔帝ムンドゥスとの因縁の始まりである魔剣士スパーダの伝説。母を殺されたこと。マレット島での死闘。ダンテは知り得る範囲のことを、あらかたネギ達へ話した。朝倉はアーティファクトを広げて遠方を偵察しつつ、取材ノートへペンを走らせていた。
「それと便利屋を始めた理由が食い扶持を稼ぐためだってのは本当だ。ただ便利屋って商売は悪魔どもの食い付きが良くてな。来る奴を片っ端から潰していけば、いつか仇に“大当たり” ってな」
右手で銃の形を作り、ダンテはそれを撃つポーズをした。
悪魔に襲撃された話と“仇”という言葉に、ネギの頭に過去の記憶がフラッシュバックする。焼け落ちたウェールズの村と、未だ石化から元に戻らない村の人々の姿。ゲーデルが言った、ネギの心の原風景だ。
時折、ネギの表情に影がさす瞬間があることにダンテは気が付いていた。とは言っても、それを図々しく聞く趣味もなければ、するつもりもないダンテは何も聞かなかった。
「その仇はとったハズなんだが……どうやらまだ終わってなかったみたいだな」
少し大げさに肩をすくめ、ダンテはため息をつく。仇はとったはずだが、先ほど見たとおりムンドゥスは復活していた。そしてまた人間界を侵略し、我がものとしようとしているのだ。
「ムンドゥスについてもうちょっと詳しく教えてくれない?」
アーティファクトを広げて偵察していた朝倉が、ダンテへ質問する。これは朝倉以外の者も興味
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