第八章 『魔帝』
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だ?」
思い出したように話を変えた龍宮は、上空へ目線を移した。空にはリヴァイアサンが未だ悠々と遊泳している。
「一人で無理というのなら手伝ってやろう。もちろん報酬は別途頂くがね」
「それなら、もうそろそろだと思います」
龍宮が冷ややかな目線とともに、いまいち答えになっていないぞ、とザジへ言おうとした時だった。
瘴気の混じった空気が震え、墓守り人の宮殿が共振する。
龍宮だけでなく、ゲーデルや近右衛門達も何事かと動きを止めた。そして悪魔達もだ。その場にいる全ての者が動きを止め、空を見上げていた。
そこには変わらず、巨大なリヴァイアサンの姿がある。だが様子がおかしい。先程まで遊泳していたリヴァイアサンは、まさに巨魔の名に恥じぬ雄大な姿だった。ところが今は、のた打ち回るかのようにもがき苦しんでいる。先の宮殿を共振させる音も、リヴァイアサンの咆哮だ。
「なにをした?」
ザジがリヴァイアサンへ攻撃していたところを、龍宮は何度か目視していた。しかしとてもではないが有効打になるものではなかった。そのため突然苦しみだしたリヴァイアサンに、龍宮は困惑していた。
「鴻大なリヴァイアサンを外から倒すのは困難を極めます。ならば中から壊せばよいのです」
表情を変えずに、ザジは龍宮へ答えた。
「だが魔族には毒物への耐性がある。個体差はあるがあの大きさの魔族ならもっと時間がかかる筈だ」
なにか毒性のものを打ち込んだのかと、龍宮も考えてはいた。しかしリヴァイアサンの巨体を蝕むとなると、とんでもない量と時間がかかるだろう。
「リヴァイアサンの体内へ入ったのは毒ではなく、私のトモダチです」
ザジは龍宮の間違いを、一言指摘した。それを聞いた龍宮はトモダチ? と疑問符を浮かべた。そして学園祭のまっただ中や、超 鈴音の送別会に見たモノたちを思い出した。、全身が黒く、顔に奇っ怪な仮面をつけたどう見ても人外のモノたちだ。ザジのトモダチというのなら、恐らくそれらも魔族なのだろう。
「つまり始めに仕掛けていた攻撃は、アレの中にトモダチとやらを入り込ませる為のものだったと。そしてそのトモダチが中から倒した、という訳か」
得心いったという表情で、龍宮はザジへ自身が理解したことを告げた。
「はい。いわば昔話の桃太郎です」
あまりに真顔で間違ったザジへ、それを言うなら桃太郎じゃなく一寸法師だ、と言うべきか龍宮は迷っていた。
その時、龍宮の背筋が冷たくなった。それが悪寒だと、はじめは分からなかった。生物としての本能が発する、自身からの警告だと分からなかった。
「なにか来たようだね」
タカミチのその一言から遅れて、龍宮はその原因へ目を向ける。その先には、今まさに命が絶えたリヴァイアサン
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