第八章 『魔帝』
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はあるまじきモノだ。
フェイトは造物主から、プリームムやセクンドゥムと異なり、自身には忠誠心や目的意識が設定されていないと聞いている。そのためなのか、昔から造物主の使徒としては相応しくない思考や言動があった。
その最たるものは、セクンドゥムの首を跳ね飛ばした時だろう。その行動は主への反逆と捉えられかねないものだったが、あの時フェイトは一切迷わなかった。なぜならその原因は――
「――馬鹿馬鹿しい」
今もなお残る記憶と、浮かんでくる情景を無理矢理掻き消し、思い出さないようにする。もう何度繰り返したかは定かではない。ただ、あの時のコーヒーの味わいは消すことができなかった。
そんなフェイトの思考を遮るように空気が震え、地面が振動した。一体何があったのか。フェイトは少し回復した魔力を使い、氷の上を跳躍していく。
辺りを見回せる所まで登ってきたフェイトは、すぐにその音の発生源を見つけた。
フェイトの視界へ入ってきたのは、魔力が大量に流れ込んでいる、裂け目を入れたような空間の穴だった。そして瘴気の混じる空の中、一際強い存在感を放つ骸骨の戦士の姿に気付く。
それは遠く離れたフェイトにも迫りくるような威圧感があった。またその戦士だけでなく、地上と空中に蠢く魔族を見てフェイトは呟いた。
「魔族か」
フェイトは状況を理解しようとしていた。流れ込んでいる魔力と魔族達からして、あの穴は魔界に通じているのだろうということは分かった。それを開いたのは、恐らく造物主なのだろうという事もだ。
だが、なぜこのような事になっているのかが分からない。
当初のフェイト達の計画では、フェイト達が儀式を発動させて魔法世界を”救済“する筈だった。また、計画の尖兵として魔族の影を利用した召喚魔は使用したが、あそこにいるモノたちは本物の魔族だ。本物の魔族を使うことは計画にはなかった。
それだけでなく、造物主は使徒であるフェイトを不意打ちし、フェイト以外の使徒たちを従えて蘇った。そして魔界への道を開いたのだ。全てフェイトには聞かされていない。なぜなら、聞く必要がないからだった。造物主にとって、フェイトの役目はここで終わりだからだ。
(人形は人形師が描いた通りに動くしかない、という事か)
ネギに腹を貫かれた時に感じた、何かがネギへと移った感覚。その何かをネギへと渡すことが、造物主から与えられたフェイトの役目だ。それが一体何かは分からないが、自身が造物主への忠誠心や目的意識が設定されていない、未調整の個体だったことも無関係ではないだろう。
何はともあれ、フェイトは魔界へ向かわなければならない。造物主へ会うため。そしてなにより、ネギとの決着をつけるためだ。
フェイトは突き動かされるように、再び歩を進め始めた。
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