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アセイミナイフ -びっくり!転生したら私の奥義は乗用車!?-
第5話「私、説得してみた」
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イダはジェイガンの手を振り払うと、そう言って心底安心した、と言わんばかりに胸をなでおろした。
それから、グウェンも加わって、がやがやといつものように他愛ない会話をする。ようやくいつもどおり。
そうグウェンとジェイガンもほっと一息をつくのであった。
―――それから2時間後。
様々な話をして、そのあと、ジェイガンはリックたちへ、イダにした説明と同じものを伝えた。
そちらも特に問題はなく、残った問題はドライベールという男に会うためにどうするか、ということだけだった。
それから半日。また他愛ない会話が続く。曰く、霜降り肉うまい。曰く、また柿が食べたい。曰く、曰く、曰く…
今度は袋やバッグの件が多く話し合われる。どう使うべきか、どうしてこんなものが使えるか。
2週間の間にした会話を反芻するように再度議論しながら、イダは魂の安息のようなものを覚えていた。
活力が湧いてくる。今までと少し違う。やはり、私の願いは間違っていない。私は彼らと、そして父母と生きたい。
ならば、どうしなければいけないのかは瞭然である。
思い立ったように、彼女は切り出す。それは運命。それは宿命。それは天命。言い繕う言葉は百万遍ある。
だが、これが「ある契機」というものだ。契機とは、チャンスとは、機会とはいつも突然なのものだ。
彼女は今、それが来たのだと心で自覚していた。そう、その魂で。
「―――あのさ、ちょっと教えてほしいことがあるんだけど―――」
それは、彼女にとって初めての「ワガママ」になるはずの、小さな、小さな希みだった。
―――前日の夜。
ヒソヒソと声が聞こえる。ヒソヒソと声が聞こえる。イダの声、ヤズの声、キカの声。そして、オーの光。
光が優しく照らす中、ヤズとキカにイダは相談する。それはとても必要なこと。始めなければいけないこと。
そうでなければ、この先生きていくことなどできない、と確信しているかのように。
それは―――誓いのための祈り、祈りのための願い、願いのための希み。
きっかけはさらわれたこと。きっかけはそれだけしかない。そんなことはない。きっかけは別にもある。
だが、表向き、人に話すきっかけはそれだけだ。
そのきっかけがなければ、彼女はただの宿の娘として生涯を終えただろう。例え、この力が、記憶があったとしても。
でも、今の私にはきっかけがある。だから、私は請わなければいけない。だから聞く。聞かねばならない。
福音のように心が自信を持っていく。大丈夫だ、と彼女は心に言い聞かせる。彼らは私の「希みを」―――
すなわちそれは、彼女にとって初めての「ワガママ」になるはずの、小さな、小さな希みだった。
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