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アセイミナイフ -びっくり!転生したら私の奥義は乗用車!?-
第5話「私、説得してみた」
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優しく微笑んでヴァレリーはそういうと、リックもまた「仕方がないな」と言って頭を振る。

「そうなってしまったものは仕方がない。それに、ある力なら使わなきゃあ損だ。圧倒的に」

リックはそう言ってしばし黙りこくる。沈黙に耐えかねて、グウェンが「にゃあ」と猫のように鳴いた時、

リックがようようと口を開いた。

「…まあ、信じよう。それと、その力を宿のために使うのもな。なあに、方法ならいくらでもある」

妻の言葉、娘の言葉、森の民の言葉を聞き、そうしてリックは判断した。

「方法はいくらでもある。いくらでもあるが、危険ではある。さっきも言ったが、香辛料や貴重な食べ物を

生む道具にされかねない危険な能力だ。お前にとってはな…」

リックは厳かに言って、そこで言葉を切った。

「でも…」

イダが口火を切ろうとした時、リックもまた言葉を紡ぐ。

「なあに、俺に考えがあるといっただろう。まあ、多少あいつに迷惑をかけちまうがね。

それでも俺らを匿うよりは迷惑じゃねえよ。この森の奥の奥、迷いの森の魔法のかかった場所には、

あいつでも自由には入れない。あそこに自由に入れるのは、長老の爺さんだけさ」

その言葉に、ジェイガンがはっと顔を上げ、そして激昂する。

「まさかッ!如何に貴方でも、あの場所に危害を加えるようなことは我が一族、許しませんぞ!?」

立ち上がって眉を吊り上げ怒りに染まるジェイガンを一瞥し、リックは言った。

「なあに。この国の皇帝は知ってるさ。あの迷いの森には、何者も手出しできない、ってな」

「しかし…」

「話は最後まで聞け」

言い募ろうとするジェイガンの言葉を遮り、リックは続けた。

「迷いの森に何があるか、それは誰も知らない。そして、誰も知らないということは、そこに何が

あってもおかしくはないということだ。しかも、帝国は建国時の盟約で森に手出しはしない…」

静かにリックは言葉をつなげていく。盟約、という言葉にグウェンのまゆがぴくり、と上がった。

「…盟約にぇえ。森の上位精霊ゲブリュールと初代皇帝が結んだっていう。それのおかげで、

この森は独立できてるんだよねえ」

グウェンは髪の毛をくるくるといじりながら、つまらなそうにそう言ってため息を付いた。

ゲブリュールとは森の上位精霊で、「轟く森の偉人」と呼ばれる森の神秘と静寂を支配する精霊である。

「確かに…皇帝が聡明なうちは大丈夫でしょう。ですが、我らにとっての100年は人間にとっての10年。

その間に人の血が濃い皇家はその約定を忘れ去っているのではないでしょうか」

グウェンはなおもいい下がる。だが、リックは知っている。その約定は破れないことを。


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