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アセイミナイフ -びっくり!転生したら私の奥義は乗用車!?-
第2話「私、帰ってこれた」
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がカヴェリから消えることはなかったという。
―――宴の後。
すっかりリックに酔い潰されたジェイガンに毛布をかけ、ヴァレリーをソファーに寝かせると、
未だに奥で飲み比べをしているリックとグウェンを置いて、イダは部屋へと戻っていった。
「…全く。私だけアルコール飲めないとか、不公平にも程がある」
かすかに微笑みながら、部屋の机で彼女はひとりごちた。帝国の法律は、どこか日本に似ていて、
ドワーフやオーク、リザードマンは15歳だが、人間やエルフ、グラスランナー、ゴブリンは
二十歳まで飲酒を禁じられている。
「…思い出しちゃった。どうしよ。やっぱり、探しに行かないと駄目ね。絶対見つけ出して、必ず聞き出す」
イダは…いや、広場つくしと呼ばれていた日本人はそう呟いた。
「…何あの同意書。あの時、ぶつかった女の子って、お母さん…よね。お母さんのお腹に、ぶつかって…」
私は生まれ変わった。ヴァレリーの胎内に宿った彼女は、そうして広場つくしという日本人を辞めて、
この世界の宿の娘イダとなった。だから、広場つくしでもあり、イダでもある。
「…アイデンティティが分裂しないだけ、マシか」
それに、今まで過ごした15年の歳月。それは全く悪くない。むしろ悪くない。素晴らしい日々だったと思える。
あまり味わえなかった親との交流。親戚をたらい回しにされてたせいで、ろくに出来なかった幼馴染。
穏やかな日々。ささやかな願いを、日本人だった頃と同じく、一つだけ抱いて生きる生き方。
心の奥底で望んでいたもの、今までやってきた生き方を守りながら、ここにはそれが全て存在した。
「…ファンタジーな世界なんて、あるものとも思ってなかったけど、悪くない。むしろ、いい。だから」
オーの光を浴びながら、イダはつぶやく。
「だから、もし、魔王なんてものがいるとしたら、私の望みを壊すっていうのならなんとかしないと」
それでも、勇者などという面倒な職業は拒否したい。拒否したいが、拒否できるものじゃなかったらどうしよう。
魔王だなんて…ありえない。ああ、もう。どうしよう。イライラ、イライラ、どうしようもない感情。
転生した後、記憶をなくしてずっとこの世界で生きてきた彼女にとって、もうこの世界は彼女の世界だ。
なら、と考えたところで、突然甘いものが食べたくなった。
「…日本人としての弊害よね。甘いものなんか、この世界じゃ中々ありつけないっつうの」
1日前までは絶対に感じることのなかったことだ。やはり、思い出せば少しだけ変わってしまう。仕方ない。
「砂糖なんて、夢のまた夢だしね…ああ、せめて柿が食べたい…柿食ば鐘が鳴るなり法隆寺、っと…」
どうしようも
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