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《SWORD ART ONLINE》ファントムバレット〜《殺し屋ピエロ》
再び戦場へ
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う表情で腕を組んだ。彼女の様子を見るに、全ての発端はそこから始まっているように思えたからだ。

「リリアンヌちゃん……言いたくないけど、彼はきっともうログインしないよ。半年間も音沙汰がないんじゃどうしもない。君がメイソンちゃんのこと好いてたのは知ってるけどさ」

「好きとか、そういうんじゃねーし……」

口先ではそう言いつつも、リリアンヌの顔には朱色が差し、瞳が儚げに瞬きされた。メイソンというプレイヤーは、彼女にとってライバルであり、密かに想いを寄せる相手だったのだ。

きっかけはよく分からない。始めは単純に好敵手としての興味だった。だが、彼と交わした言葉が多くなるうちに、彼の人格に矛盾を感じるようになったのだ。まるで仮面の下には別の人間がいるような違和感。−−その正体を知りたいという気持ちが、恋心に変わってしまったのかもしれなかった。

デジタルで構成された仮想空間であっても、人の意識がそこにある限り、生身の感情が発生するのは必然である。困惑しつつも、リリアンヌはそのことに気がついていた。

「……まったく彼も野暮な男だよ。こんな女の子を半年間もほっとくなんて。ピエロだかなんだか知らないけど、戦闘以外はてんでダメなんだから」

「違うよ私が必死に隠してただけ。……でも、まぁそうだね。確かにメイソンってそういうとこあるから、私の事なんて元から眼中にないかも」

沈鬱な雰囲気で黙り込んだリリアンヌを見て、コヨーテも居た堪れない気持ちになった。何を言ったところで根本的な解決にはならない。そのことを知ってコヨーテは悔しく思った。

「そんなことないよ……メイソンちゃん興味ない人とは話もしないじゃん。元気だしてよ。あっ、そうだ! これからフレンドとの約束あるんだけど、君も来る?」

コヨーテは気分を変えるように、わざと明るい口調でそう言った。その好意に気がついたリリアンヌも、多少ぎこちなくではあるが話を合わようとする

「うーん、それもいいか。人数が足りないなら私も何人か呼ぶよ……」

指先の動作でメインメニューを表示。次にフレンドリストを呼び出し、パラパラと流していたリリアンヌの動きが、あるプレイヤーの名前を見た瞬間、不自然に凍り付いた。

そこにあったのはーー

「……嘘」

ルビーを思わせる瞳に涙がたまっていくのを、コヨーテはびっくりして眺めた。

「どどど、どうしたの急に。オッサン? オッサンが悪いの?」

「違うバカ。……これ、見て」

震える指先でメニューを可視状態にしたリリアンヌは、コヨーテの肩をぐいと自分の方に引き寄せた。情けないぐらいされるがままの彼は、その細い指がさすものを見て、彼女が泣いた理由を余すことなく理解した。

ここ半年間オフラインになっていた《メイソン》の文字
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