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《SWORD ART ONLINE》ファントムバレット〜《殺し屋ピエロ》
再び戦場へ
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キンキンと反響する罵倒に仰け反りつつも、器用にジョッキを傾け続ける中年の男ーーコヨーテは、それが空になったと知るなり、通りかかったNPCに声をかけた。コヨーテは灰色の髪を後ろに撫でつけ、青い瞳をもったプレイヤーだ。とりたてて特徴のある男ではないが、仮想空間に慣れた佇まいと、静かな迫力をたたえた瞳が、相当な実力者だと物語っていた。

「無視しないでよ! この飲んだくれのトンチキ野郎!」

ガーッと詰め寄るリリアンヌの顎を押さえるコヨーテは、精悍な顔を小揺るぎもさせず、運ばれてきた新しいジョッキを手に取った。

「こらこら、女の子がそんな乱暴な言葉使わないの。だいだい、貧しいオッサンの至福の一時を邪魔しちゃ罰が当たるよ」

「知るか! というか子供扱いしないでよ。もう高校生だって何回も言ってるじゃん!」

「はっはっはー、相変わらずリリアンヌちゃんは合法ロリの道まっしぐらなんだね」

「ふ、っざけないで変態ー!」

ジョッキがたたき落とされ中身が盛大に零れた。コヨーテの悲痛な声を聞きながら、リリアンヌは鼻息荒く椅子に腰を下ろし、むすっとふくれっ面を作った。

自慢の灰色にカスタマイズされた迷彩服と、汎用性の高い茶色のアサルトライフルSCAR-Lを水浸しにされ、流石に怒ったコヨーテがリリアンヌを睨みつける。

「ちょっと、何イライラしてるんだいリリアンヌちゃん。最近ずっとそうじゃない」

咎める彼の口調に、リリアンヌは唇をぎゅっと引き結び、あらぬ方向を向いた。そのまま気不味い沈黙を味わうこと数秒。先にリリアンヌの方が口をもごもごさせて謝った。

「ごめん。ちょっとやり過ぎた」

ぶっきらぼうながら、本気ですまないと思っているらしい言葉に、コヨーテも肩の力を抜く。リリアンヌの気分を逆撫でしないように気をつけつつ、コヨーテは慎重に話を切り出した。

「理由を話しくれよ。ほら、僕たちコンビ組んで長いでしょ? 無理にとは言わないけど、打ち明けた方が楽になる事もあるよ? オッサンぐらい生きていると自然と分かるんだなぁ、そういうの」

気楽な声に背中を押され、一つ溜息をついたリリアンヌは、ふかふかのスカートの端を整えつつ、めんどくさそうに言った。

「別に、そんな大層な悩みって訳じゃないの。ただ退屈ーって感じるんだ。私と戦える相手なんて、あなたを含めてもサーバーに10人いないよ。……ホントつまんなくなっちゃたよね、このゲーム。……あの人がいなくなってからは特にさ」

その話にピンとくる所があったらしく、コヨーテは何気ない感じを装って聞いた。

「……えっと間違ってたら悪いんだけど、それってもしかしてメイソンちゃんのこと?」

「……」

フリルをいじり始めたリリアンヌに、コヨーテは如何にも困ったとい
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