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アセイミナイフ -びっくり!転生したら私の奥義は乗用車!?-
第1話「私、思い出した」
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で信じているものなど、街住みのオークくらいじゃ。今日日、ゴブリンでも信じとらん。」
嫌味も何もなく、ただ少女の無知を指摘する。その声の聞こえる方向へ、ビョウ、とすごい勢いで、いやこの投力なら先ほどの大きな殴打音も
納得がいくかもしれない速度で枕が飛んでいった。バシン、と音を立てて壁にたたきつけられたそれは、すぐに床とキスをする。
「心配をするでない。なあに、お主がこの屋敷を出ていかぬ限り、ワシはこの屋敷を出ていく気はない。安心して課題をこなすが良い。
ワシのシャツもな。時間を取らせてスマなかったな」
虚空からそんな声が、遠ざかりながら聞こえてくる。多分、家の精霊にふさわしく、両親の仕事の綻びを繕いに行ったのだろう。
時刻は夕方にさしかかろうとしている。イダは手をかざすと、「精霊の言葉」を優しく唱える。
『オー、お願い。明かりをちょうだい。時間は…一刻ほどでお願いするわ』
すると、輝く丸い玉のようなものが中空に現れ、イダを見つめた。同時に、イダは自分の中から少しだけ力が奪われるのを感じた。
玉の中央には二つの周りよりも輝く部分があり、まるで目玉のよう。
「オー。陽の光は十分に浴びた?申し訳ないけど、お願いね。今日は考え事があるから」
「…」
イダの優しい声に、オーは頷くように震える。震えが収まると光は安定し、部屋の中を蛍光灯が照らしているかのように明るくする。
太陽の光の何十分の一の輝き。輝く球体は光の精霊ウィル・オ・ウィスプだ。彼もまた、キカと同じようにイダに自分の意志を伝えてくる。
『大丈夫だ』と。その意志の波動に、ニッコリと笑うと深く息を吸って椅子に座った。
「…さて、どうしてこんな力あるんだろ。精霊魔術なんて、エルフさんでも修行しないと使えないのに」
もちろん、それはリックやヴァレリーから聞いた話だ。森で両親と二人で過ごし、友だちもろくにいない彼女に精霊の知識など、
両親が教えてくれる簡単なものしかない。
「はー…全く、どうしてこうなったのやら…とりあえず、考えよう…」
呟いて、台帳を開くと、コンコン、とドアが叩かれた。
「…誰?」
まだ夕飯の時間には早い。宿には、今誰も宿泊していないが、それでも両親の習慣で食事は日がとっぷりと落ちてからと決まっている。
『俺だ。開けてくれ』と精霊語で呼びかける声が聞こえてきた。
「ノッカーらしいね…キカもこんなふうだったら良かったのに。やれやれ」
息を吐いて、彼女はドアを開ける。そこには、キカと同じくらいの背丈の赤毛の少年が立っていた。
「いらっしゃい。ヤズ。どうしたの?」
「いや、良い石と土の取れる場所を見つけたんだ。レンガの材料になる粘土を探していただろう?」
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