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アセイミナイフ -びっくり!転生したら私の奥義は乗用車!?-
第1話「私、思い出した」
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の模様も、あたし嫌いだし…高いし…その…ええと…」

母の声は徐々に小さくなっていく。イダと呼ばれた少女のジットリした目が、その湿り気を徐々に徐々に…水というか闇にように濃くして

睨みつけてきたからだ。そんな彼女は紙に…「何故か」「我々の知る言語で」「阪神」と書いて母に手渡す。

「買わなくていいから。これをシャツにでも刺繍してくれればいいから。間違ってもこっち書いたら、1年口聞かない。」

そう言って、やはり同じく「日本語で」…「巨人」と書いてビリビリに破く…なにか恨みでもあるのだろうか?

「…わかったわよう。裁縫、得意じゃないけど…でも、それってなんの模様…?よくわからないんだけど…」

「さあ…?何百年も前に、変な帽子かぶった人が作ったものらしいけど…」

私にも何がなんだかわからないけど、気に入ったのだから仕方ない、とばかりに頭を振って、その作りの悪くない…

いや、クマさえなければ美少女といっていい顔を破顔させる。

「よかった。ありがとう、お母さん。お父さんも…タペストリより、この模様が欲しいだけだったの。ごめんなさい…」

最後の言葉は謝罪混じりで、でも、確かにうれしさをにじませた少女らしい顔を見せる。

彼女の名前はイダ。森の宿カヴェリの娘。宿の主とリックとその妻ヴァレリーの自慢の娘だった。



「とりあえず無理は無理。今のままでいいなんて無理。お客さん増やさないと、エルフさんに迷惑かけまくるだけじゃない。」

それからすぐ、母親…ヴァレリーは席を外し、いそいそと裁縫道具を取り出して自分の部屋へと去っていった。

それをにこやかに見送ったイダはリックの糾弾を再開したのである。

「別に私はこの宿がダメになってもお父さんとお母さんがいればいいけど、この宿を頼りにしてる冒険者さんとか、

迷い込んでくる旅人さんとか、困るんじゃないの?エルフさんたちだって呆れるわよ。きっと。」

「いや、しかしだな…そうは言っても、こりゃほとんど趣味だ。エルフやグラスランナーが俺たちに恩を感じていてなあ…」

弁解する父親を切って捨てるかのように響くは、少女の大音声だった。

「だまらっしゃい!宿を存続させるのはお父さんの義務!そのためにはお金が必要なんです!何よ!今年の税金、滞納してるくせに!

このままじゃ脱税で逮捕されちゃうよ、お父さん!私、農奴とか絶対やだからね!」

風貌に似合わない口数でまくし立てるイダを見て、目をパチクリさせるリックを尻目に彼女は続ける。

「…別に願い事とかあんまりないけどさあ…お父さん、世の中甘く見過ぎだよ。ありえないよ。権利は義務と対になってるんだよ…」

ジト目の痛さに耐えかねたか、それとも父としての威厳を見せようとしたか。リ
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