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SAO二次創作者と、二次主人公ズの、やりたい放題桃太郎
第三章 救出作戦
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滲ませた顔を突然上げ、塗れ羽色の瞳を見開いた。だがそこには、先ほどまで自分を包み込んでざわめいていた虫たちはかけらも存在していない。

?「目が覚めたか」

周囲を見渡したえみの視界に、虫の代わりに飛び込んで来たのは、少し長めに切り揃えられた髪の奥から優しげな瞳を覗かせた、一人の青年だった。

えみ「……!」

青年の存在に気付いたえみは、反射的に刀を取って立ち上がろうとした。が、まだ体から毒が抜け切っていないのか、バランスを保てずに転んでしまう。

まさき「落ち着け。俺は敵じゃない。その証拠に、虫を追い払って血清を飲ませただろう」
えみ「え? あ……」

空になった小瓶を見せる青年を見て、えみの中に微かに残っていた記憶が舞い戻ってきた。確か、自分が力尽きかけたときに突如突風が吹き、その後青年が薬らしきものと水を飲ませてくれた。その時の声からして、彼がその青年だろう。

えみ「……すみません。気が動転していて……。それと、ありがとうございます……」
まさき「いや。問題ない」

青年は一言だけ言って立ち上がると、えみの前に手を差し出した。

えみ「あ、ありが……」

えみはその手を取ろうとするが、手と手が触れる直前になって、躊躇したように動きが止まる。
しばらくの間、そのままの状態で静止していたえみだったが、やがて決意したようにその手を引っ込めると、その手を地面につけて頭を下げた。いわゆる土下座の体勢である。

まさき「おい、一体何を……」
えみ「わたしはこの島を代々管理している者で、えみと申します。実は、わたしの他に二人、姉妹がここに捕まっているのです。身勝手なことは重々承知しておりますが、どうか、どうか二人をお救いください……!」
まさき「それなら大丈夫だ。もう別の二人が助けに向かっている。今頃脱出を試みているだろうから心配はいらない」
えみ「そう……ですか……」

額を地面に擦り付けて懇願するえみにまさきが伝えると、えみは心底安堵したようにほうっと息をついた。が、それも一瞬のことで、再び緊迫した表情に戻る。

えみ「でしたら、今すぐにこの島を脱出してください。そのための時間はわたしが稼ぎますが、そう長くは持ちません。ですから、一刻も早く……!」
まさき「それは無理だな」
えみ「そんな……! 金品は奪われて何も残ってはおりませんが、他のもの……この身体などでよろしければ、幾らでも……!」
青年「落ち着け!」
えみ「……ッ!」

まさきが強い声で言うと、えみは萎縮したように黙り込んだ。それでも想いは変わらないらしく、頭を下げたまま縋るように「どうか……どうか……」と、うわごとのように呟いている。
まさきは彼女の前でしゃがみこむと、宥めるように話し出した。

まさき「……すまない
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