加持編 血と汗の茶色い青春
第五話 俺の野球、是礼の野球
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ない、確かにそうですね。それがチームというものです。ありがとう加持君。これまでにない意見でした。同期も言ってくれないような事を、よくぞ後輩の立場から言ってくれたと思います。」
多分、俺と同じような事は、3年生の誰もが考えていたと思う。でも誰も鷹匠さんには言えなかったんだ。1年秋から不動の正捕手で、言わば学年の出世頭。この時点での通算本塁打24本はチームトップで、打率も5割近い。捕手陣の中で白神の縦スライダーを百発百中で止められるのは鷹匠さんだけで、白神の甘いランナー警戒のハンデの中で盗塁を半分刺せるのも鷹匠さんだけである。
これ以上ないほどの働きを見せている鷹匠さんになお、「もっと頑張れ」なんてご無体な事は俺くらいしか言えなかったんだ。
もしかしたら、育ちがめちゃくちゃ良いボンボンで、どこか「庶民」と距離があるような鷹匠さんの人となりも影響したかもしれない。
「よし、僕は今日から変わりたいと思います。ですので加持君、君も変わる事を約束して下さい。」
「はい?」
話が終わったと思っていた俺にとっては、これは予想外の展開だった。
「僕ももっと積極的になりますから、加持君も積極的になって下さい。本気でレギュラーを取りにきて下さい。共に変わりましょう。」
鷹匠さんにこれを言われた時は、訳が分からなかったよ。そもそも、あんたがレギュラーに居る限り、俺がレギュラーになんかなれる訳が無いだろうがって。
「君は自分の素質に自覚が無さ過ぎます。君は背も高いし、長打力もあるし、肩も強いじゃないですか。」
「しかし、自分は不器用で…」
「そこさえ越えれば、一軍も、その上も見えてきます。君はどうも、欲が無さ過ぎますよ。君に足りないのも積極性です。」
そう言った鷹匠さんは、俺の小指を自分の小指に絡めてきた。
「指切りげんまんです。男と男の約束ですよ。」
「は……はい!」
そうやって俺は、意図せずに「ガチになる事」を約束させられた。
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そうして気がついたら、俺は二軍の4番になっていた。別に俺の実力が劇的に伸びたという訳じゃない。少なくとも、俺自身にそんな感触は無かった。
ただ、周りが相当、落ちた感じはした。
昨秋に二軍の試合に出ていた3年生は、最終学年になってもまだ二軍に居る時点で見限られ、出番をどんどん減らしていった。俺の同級生も、早くも諦めの色が出てくる。今一軍に居る同級生は9人以上居り、このままではレギュラーはそいつらと1年のトップ集団で占められるのは確定している。「頑張ってベンチ入りを目指す」という惨めさに心が折れた奴も多かった。
ちゃんと生きた目でプレーしている奴は、俺と、香椎と、「まだ1年だから二軍で経験を積んでるだけ」と自覚している1
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