第24話「異形の力」
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いなくなった空間を見つめる。
「……」
魔法も気もありえない。なぜなら、彼はそんな能力を持っていないから。
ならば、あの変貌を一体何と説明すればいい?
あの力をどう考えればいい?
唯一考えられるタケルの可能性。
人間と他の種族とのハーフ。例えるなら刹那のような。
あれほど無機質で生物的でない種族など、長年の時を生きてきたエヴァンジェリンですら見たことがなかったが、可能性としてはそれしか考えられなかった。
――だとすれば。
エヴァンジェリンは考える。
「……あんな魔法があるなんて」
ネギは知らない。タケルが魔法を使えないことを。
タケルに口止めを頼まれているため、それには答えず「お前も奴と戦えるほどに強くなれ」と簡素に応じ、黙り込む。
「はい!」
ネギの中では再びタケルへの憧れが進んでいるのだろう。朗らかで希望に満ちた目で答える少年に、エヴァンジェリンはなぜか苛立ちを感じてしまった。
「――奴もまた一人の人生を歩んできたのか?」
ポソリと呟いた言葉は闇夜に紛れ、融けて消える。
「戻るぞ」
「あ、はい」
そうして、彼女たちは歩き出す。
満月が辺りを照らす。
もう、誰もいなくなっていた。
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