3:第五十二層
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アインクラッド第五十二層は、フロアの殆どが鬱蒼とした森林地帯が占める、この世界では比較的ありふれた階層だ。
ただ、どの階層の森林地帯にもゲーム世界ならではの様々な意匠をこらした個性がある。大木のようなキノコが乱立する森、蔦の多い南国ジャングルのような森もあれば、生える木々全てが桜の森など実に様々だが、この通称《薄光の森》はその中でもかなりユニークな森と言えるだろう。
まずこの場所はその名の通り、この階層は一部時間帯を除き、日中薄暗い。日が昇る朝から正午でようやく現実の早朝程度の日差しが照り、昼を過ぎると早くも夕日が沈むように夜に近づくのだ。更にその先の時間帯は言わずもがなだ。
原因は何かというと、その空全体の天を覆うほどに枝と葉を伸ばす超弩級の巨大な木《霊木》が階層中央に鎮座しているからだ。その根元には、霊木を中心としてドーナツ型に栄える主街区《ジュイン》が転移門からやってくるプレイヤー達を待っている。
だが、ここに降り立ったプレイヤー達は、その霊木の木陰による暗さに視界を奪われる事は無い。何故かと言うと、ここでその個性的な森……草木達の出番だ。
この階層に生息する多くの植物は、薄く透き通り発光した葉や花弁を持つ神秘的な外見をしており、そこから光の粒のような……儚げながらも広範囲に薄く発光する花粉らしきものを撒き散らす。そして風に運ばれたそれがまるで蛍の様に舞い踊り、階層全体が視界を遮らない程度にクリアディープブルーなコントラストに保たれているのだ。
だが、このいかにもファンタジー然とした空間がプレイヤー達の記憶に色濃く残っているかといえば、首を横に振らなくてはならない。
原因には、なんだかんだで日の光を恋しくなったプレイヤーが続出した点や、クエスト数や狩りの好効率なマップが少なく、コアなプレイヤーが滞在に至るまでの理由にならなかった点などがあるが、やはり最大の要因はこれだろう。
この階層は、僅か一週間足らずで攻略されたからである。
本来、次の階層へ進む際に避けて通れず、必ず探し出さなければならない迷宮区だが……この階層がアクティベートされ、早速マッピングが始まったその僅か翌日、手始めにまずはただ西へ偵察隊を送り込んだ所、幸運にも迷宮への入り口が発見されたのだ。針の穴に糸を通したかのような幸運に恵まれ、更に距離自体も遠くなかった事もあり早速大部隊を編成、迷宮のマッピングも滞りなく完了し、ボスこそ防御力が異様に高かったが攻撃力が低いという弱点があった為、交代で仮眠を取りながら数日掛けて誰一人欠く事無く一度目の挑戦で撃破。今まででも確実に五指に入るであろう安全かつ迅速な攻略へと至ったのである。
そしてこの森は数多くの人から注目を浴びる事無く、次の階層へと興味関心の的を譲ったのだった。
今回俺が赴く
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