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最後の大舞台
4部分:第四章
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かな」
 彼は球場に入る時そう思った。
 ダイエーはこのシーズン福岡に移って初めての優勝を達成していた。その戦力はかっての弱小球団とはまるで違っていた。
「変われば変わるもんや」
 山本は素直にそう思った。
「わしも近鉄に戻ったしな」
 彼は自分の数奇な野球人生を振り返りそう思わざるをえなかった。
 試合はダイエー有利のまま進んでいく。やはり優勝したチームは強かった。
「ホンマに変わったもんや」
 またそう思った。
「嬉しいやら悲しいやらやな」
 古巣が強くなるのは嬉しい。だが敵だからその思いは複雑であった。
 やがてダイエーは最強のカードを出してきた。中継ぎエース篠原貴行である。
 速球を武器とする男である。何よりも彼にはジンクスがあった。
「篠原が投げると負けない」
 そう言われていた。彼はその抜群の勝ち運でこのシーズン負けなしの十三勝を挙げていたのである。
「運も実力のうち」
 と言われる。篠原にはその幸運の女神がついていたのだ。
 近鉄は彼を打てなかった。そして佐々木はベンチを出た。
「代打か」
 ここで彼は代打を送る気でいた。だがそれは山本ではなかった。別のバッターを送るつもりだったのだ。
「山本は次や」
 そう考えていた。だが山本のことが頭にあったので咄嗟に彼の名を口にしてしまった。

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