オープニング
塔矢アキラに覚えてもらうんだ
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「はじめまして。藤崎あかりって言います。
あなたにどうしてもお願いしたいことがあって、ここまで来ました。
単刀直入に言います。塔矢アキラ君とペア碁で打てる女流棋士になりませんか?」
「「「「え?」」」」
プロ棋士、水橋三段と共にやってきた謎の少女、藤崎あかりと言うらしい……が、
開口一番そんな意味不明なことを問いかけてきた。
その場が完全に固まったのも無理はない。
彼女に会ったことは一度もなかったはずだ。どうやって彼女は私を見つけたの?
いや、違う。彼女は塔矢アキラとペアで打てる女流棋士と言った。
つまり彼女の狙いは、とにかく強い女流棋士。
なら、なんで私?
今院生には女子が5人いるけど、私は3番目。1番じゃない。
その上原因不明のスランプに陥って伸び悩んでいる。もう少ししたら4番目になりそうな位。
なのに、彼女は私を選んだ。頭がぐるぐる回る。わけがわからないよ。
「なんで」
口をついたのはそれだけだった。まだ混乱している。
「彼と、ペア碁で対決してみたいと思ったから。本当にそれだけなんです。
でも、彼は彼に迫るような実力のある人とじゃないとペアを組んでくれない」
「なら、あなたがなれば」
「対決したいんです。 同席じゃなく」
「一対一はダメなの?」
「ペアでやりたいんです」
「なんで」
「ペアの塔矢アキラは、一度も見たことがないから」
彼女の望みはわかった。塔矢アキラ。彼をペア戦のテーブルに連れてくること。
それを達成するには、彼くらいに強い女流棋士が必要で、
そしてそれは私だと言ってるんだ。
「私、そんな強くないよ」
「今はそうかもしれません。
でも、あなたは強くなります。強くしてみせます」
「あなたが?」
「はい」
「補足しておくが、この子は少なくともあたし並には強いよ。
いや、多分あたし以上なんだろうね。もう次勝てる気はしないし」
え?
今一瞬水橋プロが言った言葉が、理解できなかった。
彼女は見栄えは私より小さい、多分中1か小6あたりなのに。
大人の、三段の水橋プロより強い?
「しかし、目標は塔矢アキラか。
確かに妥当だとは思うよ。あたしと渡り合ったんだ。
多分一対一なら、普通に渡り合える。勝つことだって……まさか」
あまりの混乱に手が震えてきた。まさかって……
「もう、勝った?」
衝撃的な質問だった。塔矢アキラに勝つって。
彼のことは話にはよく聞いてる。塔矢行洋の一人息子。既にプロ並みの腕前。
だから多分、院生の誰よりも強い。そして、その彼は多分次のプロ試験に来る。
彼に勝つということは、当然彼女の腕前はプロ並み……いや、違う。
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