第五十四話 コンビニの前その八
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「約束通りだね」
「来たんだね」
「ええ、博士は?」
愛実は妖怪達に応えながら来ると言っていた博士の所在を尋ねた。
「何処なの?」
「ああ、博士ね」
「まだ研究室かな」
妖怪達は愛実のその問いにこう答えた。
「今はね」
「まだかな」
「ふうん、そうなの」
「まだ研究されてるのね」
愛実だけでなく聖花も妖怪達の話を聞いて頷いた。
「それじゃあ早く来過ぎたかしら」
「ちょっとね」
「いや、丁度だよ」
「今二時になったよ」
今一行はコンビニの正面、駐車場のところにいる。妖怪達は自分達から見て後ろにあるコンビニの店内にある時計に首を向けて見てから答えた。
「二人は丁度だよ」
「博士が遅いだけだよ」
「そうなの、博士が遅れるっていうのもね」
「ちょっとね」
「まあそういうこともあるね」
「博士って結構時間はきっちりしてる人だけれど」
そうした人でも時にはというのだ。
「だからね」
「まあちょっと待ったらね」
「いや、今来たぞ」
まさに呼ぶよりだった、博士の声がしてきた。
そして二人が後ろを振り向くとだ、そこに博士がいた。いつも通り飄々とした感じである。
「丁度終わったところじゃ」
「あっ、こんばんは」
二人は身体全体で振り向いて挨拶をした。
「今来られたんですね」
「二時に」
「約束じゃしな、研究を一時中断してな」
そうしてだというのだ。
「ここに来たわ」
「そうなんですか、すいません」
「研究の邪魔をする形になって」
「いやいや、いい気分転換じゃ」
だからいいというのだ、博士はほっほっほという笑いで述べる。
「研究に没頭していても時折気分転換をするのもな」
「いいんですね」
「だからですか」
「そうじゃ、今来てじゃ」
そしてだというのだ。
「泉も探すかのう」
「そうそう、泉ですけれど」
「そのことですけれど」
二人も博士に応えて言う。
「コンビニの何処ですか?」
「何処が泉なんですか」
「まずは中に入ることじゃ」
博士はコンビニの中を見つつ二人に言う。ガラス張りの店内は丸見えである。
店の中にはコンビニで売られている商品が並んでいる、博士はその店内を見つつ二人にこう話すのだった。
「コンビニにも二つの世界があるのじゃよ」
「他のお店みたいにですね」
「表と裏みたいに」
「そこに入る場所じゃ」
博士はこう二人に話す。
「何処かはわかるかのう」
「ううん、お店の中ですか?」
「事務所とかの」
「その通りじゃ」
まさにそこだというのだ。
「そこに入ればいいのじゃ」
「そこが若しかしたらですね」
「泉かも知れないんですか」
「前から思っておったが泉は扉と言ってもよいな」
博士は考える顔で二人に述べた。
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