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久遠の神話
第八十話 残る四人その十
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 その時間が終わる、だからだった。
「では行きましょう」
「わかりました」
 上城も頷いてそしてだった、彼等は。
 それぞれの場所に戻った。上城はクラスに、高代は自分の授業が行われる教室に。二人は日常に戻った。
 その日の夜は戦いだった、上城は己の剣を出して構えていた。その一刀を右手に構えて目の前にいる怪物を見ていた。
 場には樹里もいる、樹里は空を飛ぶ老婆の顔の怪鳥を見て言った。
「上城君、この怪物は」
「うん、ハーピーだよ」
 上城もその怪物の名前は知っていた、これがこの怪物の名前だった。
「人の頭を持つ鳥だよ」
「そうよね」
「確かこの怪物は」
 空を飛びながら隙を伺う怪物を見上げてだ、上城は樹里に話した。
「武器はその足の爪だったね」
「人の口もあるわね」
 見れば歯は普通の歯ではない、全て牙になっておりねめりとした嫌な光を放っている。
 その光も見てだ、樹里は言う。
「毒がありそうね」
「確かハーピーはかなり不潔だったね」
「そういえば」
 女の顔にしても醜い老婆の顔だ、それに。
 月明かりに照らされている白と赤の身体はやけに汚らしい、まるでずっと水浴びをしていないかの様である。
 そのハーピーの身体を見てだ、樹里は言った。
「かなり汚そうね」
「汚いってことはね」
「雑菌ね」
「うん、病気の危険があるね」
 この場合は毒になるだろうか、ギリシア神話におけるハーピーは犠牲者の食事を食い散らかしそこに糞をして去るそうした怪物だった。
 それ故にだ、上城も言うのだ。
「だから下手に攻撃を受けると」
「危険ね」
「剣士の戦いでは毒とかはその戦いだけのものだけれど」
 怪物に勝てば消える、それがこの戦いの決まりの一つだ。
 だが、だ。戦いの中で受けてしまえば。
「それが大変なことになるからね」
「絶対によね」
「うん、攻撃は受けられないよ」
 毒を受けるからだ、それは毒の強さ次第だが致命傷になる。
「絶対にね」
「そうね」
「ただ、相手は空を飛んでいるから」
 それが厄介だった、今回は。
「狙いにくいね」
「どうして闘うの?」
「やり方はあるよ」
「やり方?」
「相手が飛ぶのならね」
 それならというのだ。
「こちらも同じことをすればいいよ」
「飛ぶのよ」
「うん、そうするよ」
「力が増したから?」
 剣士としての力、それがだというのだ。
「だからなのね」
「うん、そうだよ」
 まさにそれでだというのだ。
「空も飛べる様になったから」
「そうなのね」
「どうやら剣士は力が大きくなったら剣の力を出せるだけでなく」
 それに留まらず、というのだ。
「剣のこと以外にも力を出せる様になるんだ」
「じゃあ今から」
「飛ぶよ」
 上城は言った
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