第六章
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第六章
「これはこれでな」
「それもそうか」
「それやったらや」
「ああ。乗ろか」
そしてこういう考えに至った。
「ここはな。あいつに乗るで」
「楽しむっちゅうことかい」
「そういうこっちゃ。こうなったらとことんまで乗ったるで」
皆もう乗り気になっていた。何時しか新庄のペースに進んで乗っていた。
今戦隊のメンバーがグラウンドに散る。皆拍手と歓声で彼等を迎える。この時東京ドームでは堀内が陰気な顔で負け試合の采配を延々と執り続けていた。札幌には太陽があり東京には暗黒があった。これだけのはっきりとした差が出てしまっていたのであった。
新庄はそれからも仕掛けていた。今度はダースベイダーになった。当然その中身は新庄であり相変わらずの笑顔でマスクから顔を出していた。
「許可は取っていますよ」
「そんな問題やあらへんやろが」
野村はジョージ=ルーカスから許可を得ているという新庄の言葉を聞いて言った。
「全く。前は自分の顔の面被ったりな。何でもありやな」
「こいつ、何処までやるんや?」
「もうわからんようになってきたな」
皆新庄が次に何をするのか全く読めなかった。だがそれもまた楽しくなってきていたのだった。
それからも戦隊になりダースベイダーになり自分自身になった。これが永遠に続くかと思われた。ところがであった。それは突如として終わることになった。
「引退します」
「何っ!?」
「何やとっ!?」
皆今度もまた驚いた。今度はこれまで以上だった。
「引退!?嘘やろ」
「早過ぎるで」
「もう充分やりたいことやったんで」
そしてまた明るい顔で笑っていた。
「これからはデザイナーやります」
「デザイナー!?そういえばあいつ」
「前そんなん言うてたな」
皆ふとこのことを思い出したのだった。
「あの時はまた変なこと言うてると思うてたけれどな」
「どうなんやろ」
「まあとにかくや」
しかしそれでも話は決まっていた。新庄は引退すると言っているのである。このことだけは紛れもない事実であり否定できないものがあった。
「あいつが引退するんやな」
「そやな」
話はここに移っていた。
「あいつがなあ」
「はよ辞めてまえって思ったこともあったけれどな」
あまりにも三振が多かったからである。
「それでも。引退するってなったら」
「ホンマかいな」
首を傾げての言葉だった。
「あいつが。嘘ちゃうかな」
「あいつは嘘は言わへんぞ」
皆これはわかっていた。新庄はそんな男ではないということは。
「それはないからな」
「じゃあホンマかいな」
「ホンマに引退するんやな」
「寂しいな、何か」
今度はこう言うのだった。
「せめてなあ。あともうちょっと」
「おるんやと思うたしな」
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