第二十七話 亡国の王と王女
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「何故あのような事を言ったのですか?」
「ん? なにか変なことでも言いましたか?」
「だってあなたはヴェインが2年前の戦争でした事を知っているでしょう!?」
怒気を含めながらアーシェはそう言った。
するとセアは何処か納得したように頷いた。
「ええ、そうですね」
「なら何故、ヴェインを信じないほうがいいと言わなかったの!?」
「では、2年前の戦争はアルケイディアから見るとどうだったのでしょうか?」
「どういう意味?」
「恐らくヴェインは戦争前から破魔石のことを知っていたのでしょう。そしてそれを持つナブラディア王国が宿敵のロザリア帝国と手を結んでいた訳です」
「それがどうしたの?」
「・・・もし親ロザリア派がも勝利した場合、ナブラディアの【夜光の砕片】はロザリアに渡っていたでしょう。そしてそうなればアルケイディアは間違いなくロザリアに滅ぼされます。アルケイディアの平和を考える上で当然でしょう」
「ですが、帝国はダルマスカにも攻め込んできたのよ!!」
「宣戦布告された以上、アルケイディアがダルマスカに攻め込むのは当たり前だと思いますが」
「・・・ではあの調印式の罠は!?」
「善悪抜きで効率だけ考えれば・・・まぁ悪くない判断でしょう。ダルマスカが【黄昏の破片】を持っている限り、アルケイディアは安心できないでしょう」
セアは個人的なヴェインに対しての評価を言っただけのつもりだった。
普通に考えれば彼は帝国のために動いただけだ。
善か悪で言うなら調印式の罠は確かに悪であろう。
だが悪を内包しない正義など存在しない。
大体ヴェインほどでは無いにしろそんなことはどこの国でもしていることだ。
元一国の主であるセアから言わせれば正義の反対は悪ではない。
正義の反対は唯の悪役気取りである。
何故なら正義など偽善と大した差などないからである。
が、ふとアーシェの方を見ると口惜しそうに拳を握っている。
それを見てセアの胸にどす黒い感情が溢れてくる。
はっきり言ってセアにはアーシェに王としての資格があるとは到底思えない。
セアのアーシェに対する評価は覇王の末裔だから下がりやすいと自覚しているがそれでも酷いと思っている。
そんなことを思っていると己の感情が抑えづらくなり、セアは頭を下げる。
「・・・失礼しました。俺は他に用事があるので先にヴァン達と合流しててください」
そう言ってセアは早足でバザーの奥へとまるで逃げるように消えていった。
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