第五章
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第五章
レフトスタンドをバットで指し示す。満面の笑顔で。
「ホンマにやるんかな」
「敬遠のボールでも始球式でも打つ男やからな」
ある意味新庄だからこそやれることではある。そして誰もそれで納得できるのもまた新庄だからであった。やはり新庄は新庄なのだった。
「さて、バットに当たるんかいな」
「あかんのちゃうか?」
そしてこうも言われるのだった。
「三振多いからなあ、あいつ」
「ボール見とらんからな」
よくこう言われていた。三振が多いからである。
「まあそれでもな。見たるか」
「何しても驚かへんわ、こいつにはな」
こんな話をしつつ見守る。しかし彼等は大いに驚くことになった。
「なっ!?」
「それかい!」
何と予告ホームランをしながらしたのは。バントだった。
しかもそのバントは成功した。何と新庄は意外にもバントが得意だったの。
「ここでバントかい!」
「ホームラン打つんちゃうんかい!」
皆それを見て思わず突っ込みを入れた。
「ホンマにあいつは」
「明日も勝つ言うたら絶対に負けるしな」
「何でや」
満面の笑顔で一塁ベース上にいる新庄を見ての言葉だ。
「まあこれも新庄かいな」
「そやろな」
半分無理矢理納得しだしていた。
「これもこれでな」
「全く。わからん奴や」
しかもバントだけではなかった。何と今度はホームスチールだ。そして今回も成功させた。お祭りの場がさらにお祭りになっていた。
「今度はこれか」
「やってくれるわ」
皆今度は唸るしかなかった。
「だからバントしたんやな」
「見事って言うべきやろな」
珍しく皆それを認めていた。
「これはな」
「確かに凄いわ」
「いやあ、ヘルメット取れて髪型が乱れないか不安でした」
しかし当の本人はこう言っていた。
「けれど大丈夫でしたね。よかったですよ」
「で、こいつはこれかい」
「やっぱり何も考えとらんのちゃうか?」
こう言い合うのであった。そして彼はまたやった。今度はベンチに戦隊ものがいたのである。
「あれは何や?」
皆またしてもそれを見て唖然として言うのだった。
「何か見慣れんもんがおるぞ」
「ここ、ベンチやな」
「ああ、そや」
「球場やぞ」
「そやな」
一応このことを確かめ合う一同であった。
「ここは間違いなくな」
「けれど何で戦隊がおるんや?」
「そういえばや」
ここで皆あることに気付いた。
「新庄やろ、あれ」
「むっ!?」
「確かにな」
「間違いないで」
ユニフォームの背番号を確かめる。見ればまさにその通りである。
「背番号一や」
「スコアボードにも名前があるな」
「ああ」
皆が漢字や片仮名であるのに彼だけがアルファベットだからすぐにわかる。そもそ
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