決戦1
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
山道を歩く完全装甲の帝国兵士が、手を横に差し出した。
「止まれ!」
叫ぶ指示の声に兵士が止まれば、銃を構えた兵士が山道の先を見る。
機動装甲車一台分程度の小さな雪深い山道。
雪で隠されるようにして、細い木でよられたロープが一本張られていた。
「前方にトラップあり」
そのロープは兵士達の頭上に伸びて、幾つもの籠に繋がっている。
「ロープを切れば頭上の籠が落ちるか。くだらん小細工だ、撤去しろ」
「はっ」
兵士が答えて、走りだす。
釣り糸だ。
ロープの遥か前方に、細い釣り糸が隠されるように張られていた。
それを無造作に踏み切ってから、感じる違和感に兵士は足を止める。
ぴんっと小さな音が鳴る。
「しまっ――」
籠の中から複数のプラズマ手榴弾が落下し、開戦の幕を開けた。
+ + +
雨のように弾丸が降り注ぎ、爆発が巻き起こる。
幾つもの装甲車から撃ちだされた砲弾が、視界を赤く染めた。
細い山道に設置された同盟軍基地の入口は五分とかからずに落ちた。
落としたわけではない。
最初から落ちる事を前提に、兵士すら配置されていない無人であった。
当初は逃げだしたかと思われたが、入ってすぐに違う事がわかった。
基地内の広場中央に設置された陣地。
そこから機動装甲車による猛攻が、基地内に踏み入った帝国軍を襲った。
相手の装甲車が使えないと思っていた兵士達が戸惑う。
そこに苛烈なまでに打ち寄せる砲弾の嵐に、三台の装甲車と数十人もの帝国兵士の命が奪われた。
「敵の装甲車は生きています!」
「浮足立つな。こちらは敵よりも人数が多い。焦らずに落ち着いて反撃しろ」
「はっ」
ラインハルトの言葉で、兵士達に落ち着きが戻る。
苛烈な砲撃に晒されていた兵士達は、上回る砲撃を敵陣地に与えた。
雪が舞い上がり、炎をまき散らす。
だが、ラインハルトの表情は晴れない。
苦さを残す表情に、キルヒアイスが隣に立った。
「驚きましたね、敵が装甲車を動かしているとは」
「形だけの間に合わせだな。一時間も攻撃を続ければ、いずれ動かなくなる」
「では、何をお悩みですか」
「分からないか?」
ラインハルトが見上げれば、キルヒアイスが首を振った。
小さく苦笑して、ラインハルトは顔を振って指し示す。
後方から見る前線の様子だ。
細い山道に帝国兵が連なり、落とした入口から敵中央の陣地へと攻撃を仕掛けている。
ラインハルトの見立てが正しければ、一時間もすれば陣地は落ちる。
一見すれば何も問題がないように見える。
「防備を固めていた入口を捨てて、広場中央に陣地を築かれた。こちらは狭い山道の入口で固まるしかない」
「敵の司
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ