決戦1
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「何がです?」
「前線基地はおとりだ。攻略できそうに見せて、その実は主戦力で左右に固めている。こちらが前線基地をいくら攻撃したところで、敵の攻撃は止まない」
「まさか」
驚いたようにキルヒアイスが戦場を目にする。
幾度とない突撃を跳ね返してきた前線基地。
分厚い雪の塹壕が、帝国兵に立ちはだかっている。
雨のような砲撃により塹壕の一部を変えられても、なお立ちふさがる。
キルヒアイスの目には、あと少しで攻略できそうな塹壕が、まるで難攻不落の砦のように映った。
乾いた唇を舐める。
褒めるべきは、おとりの役目を十分過ぎるほどに果たしている敵。
だが、キルヒアイスは敵としてここにいる。
「ならば。攻略をやめて、こちらも持久戦に持ち込みますか」
寒風が吹きすさぶ中では、補給よりも先に人の消耗の方が激しい。
無理に攻めずとも時間をかければ、いずれは敵の方に限界がくる。
呟いたキルヒアイスの案に、ラインハルトは首を振った。
「いや。おとりまで使って敵が時間を稼いでいるということは、味方からの援軍を期待してのことだろう。時間をかけるのはまずいな」
「援軍ですか」
どうやってと尋ねかけたキルヒアイスに、ラインハルトは唇をあげる。
「この環境を当たり前と思わない事だ、キルヒアイス。悪天候で空からの支援が難しい――それは通常環境下でのことだ。こちらの部隊が集まっているいまならば、爆弾を積んだ無人偵察機をここに落とすだけで、敵にとっても十分元は取れる」
身を低くしながら、ラインハルトは後退する。
「どこに」
「動くのならば小隊単位で動いても無駄だ。前線基地への攻撃よりも先に、左右の部隊を狙うべきとヘルダー大佐にお伝えする」
「私も――」
「キルヒアイスはここにいろ。左右の圧力がなくなれば、前線基地を落とす必要がある。なに、大丈夫だ。心配するな、いくら奴でも司令部で暗殺などしないだろう。そもそも」
ラインハルトは皮肉気に笑んだ。
「それでは、暗殺ではなく、明殺だろう?」
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