決戦1
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れでは中央の部隊が危険ではないか。もう少し人数を置いた方が」
「多くの人数を置くために前線基地を広げて防備をおろそかにするよりは、人数が少なくても敵の攻撃を確実に防げる塹壕を掘った方がいいでしょう。それに少ない方が敵もすぐに攻略できると思ってくれるでしょうしね」
アレス言葉に、唸り声をあげて誰もが黙った。
危険である。
だが、それを理解しても代わりの案など浮かんでこない。
「――それで援護まで耐えられるか」
「敵が上手くこちらの策に乗れば五時間は。そうでなくても二時間は稼げるでしょう」
「二時間か。ぎりぎりだな」
既にカプチェランカ基地が敵の攻撃を受けることは連絡されており、支援のための機体もカプチェランカの外周まで来ている。
だが、カプチェランカの劣悪な環境が簡単な支援を許さない。
暴風がおさまるほんの一瞬――それが二時間のうちにくるかどうか。
呻くような言葉が、先の会議で流れていた安堵を消し去っていた。
耐えられなければ負ける。
それを今決めなければならない。
「これは味方からの支援を前提としているが、もし支援がこなければどうなる?」
「十五台の装甲車と百数十名の人員で、一個大隊以上の敵と戦う事になります」
アレスの即答に、誰も言葉はなかった。
沈んだ空気を収めるように、レティルが小さく笑い声を出す。
「敵がこちらの作戦にのってくれることを祈るばかりだな」
+ + +
一時間半が経過しても、敵の前線基地は落ちなかった。
幾度となく攻略隊が攻撃を仕掛け、あと少しというところまでは来ている。
だが、最後のところで敵の攻撃によって攻略を中断させられている。
「あと少しだ。ここが正念場だ!」
前線の指揮官が励ましを口にし、再度攻撃隊を編成し始めた。
先ほどは数が少なかった。
ならば、倍の戦力を投入すると口にしている。
士気を高め、装備を確認している背後で――キルヒアイスが疲れたように息を吐いた。
「随分と長いあと少しですね。もう三十分は同じことを聞いています」
「そうだな……いや。そうか」
後方で、戦場を見続けていたラインハルトが小さく目を開いた。
言葉の変化にキルヒアイスが真っ先に気づく。
問われる視線に、ラインハルトは唇を噛んで前に出た。
「危険です」
「かまわない」
迫撃砲の甲高い音が響き、誰もが頭を下げる。
そのさなかで、ラインハルトは身を乗り出して前を見た。
そして、確信を得たように頷いて身体を下げる。
至近距離で爆発した迫撃弾が、雪を散らす。
「危険です、ラインハルト様!」
「やられたな。キルヒアイス」
身体を雪に埋もれながら、視線だけを戦場に向けてラインハルトは息を吐いた
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