決戦1
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令官は優秀なようですね」
「元ある防御施設をあっさりと捨てて、新たに陣地を構築するなどなかなかできる事ではない。敵も馬鹿ばかりだけではないというわけだ」
「どうしますか?」
「敵に合わせて無理に攻めれば被害は拡大する。断続的に攻撃を仕掛ければ、いずれ敵の攻撃も途絶えるだろう。そう伝えてくれ」
「わかりました」
+ + +
断続的な砲撃は、しかし、分厚い雪に守られた陣地内部までは入ってこない。
切り返す攻撃が相手の戦線を崩す。
狭い入口からでは、敵も満足に攻撃ができない。
前方に配置された装甲車と歩兵の攻撃だけでは、雪の壁を撃ち抜けないでいる。
「三番車両の砲身が限界です。交換します」
雪の壁越しに撃ち込んでいた装甲車から、兵士が悲鳴に近い声をあげる。
何十発と砲弾を吐きだした砲口は赤く焼けており、雪をかぶせて冷やしている。
それでも限界が着たようで、一部に亀裂が入り始めていた。
もし最初から全ての車両を投入していれば、ものの十分で反撃は限界になっただろう。
砲口があるいは、敵の攻撃によってダメージを受けた装甲車は後方に下がって、手動切り替えが間に合わなかった装甲車から外した部品を交換して、再度出撃の準備をする。
それによって隙がなく反撃を続け、戦端開始から一時間を経ても敵はいまだに入口から入ってこない。
それでも、着弾と同時に舞い上がる雪が上から降り注ぐ。
歯を噛み締めながら、悲鳴を我慢して銃の引き金を引き続ける。
休みなく続く戦闘を行うのは、アレス率いる特務小隊に各小隊から人数を割いたほんの数十人だけだ。誰もが休息すらとらずに、反撃をし続けている。
「――敵後方に高射砲を発見。迫撃砲を」
「敵歩兵が、再度こちらに向かっています」
「歩兵は気にするな。敵後方の高射砲を狙え。いいな」
「しかし!」
「いいから、少尉の言うとおりにしろ。迫撃砲準備はできたか?」
「はい。敵歩兵ではなく、敵後方でよろしいのですね」
「準備出来次第、撃て」
「撃て」
迫撃砲が打ちあがる。
それは敵の前線を飛び越えて、後方に展開していた高射砲部隊を直撃した。
まさか最前線ではなく後方が狙われると思っていなかったのは、高射砲部隊だ。
突然降り注いだ迫撃弾に、高射砲三機が破壊され、周囲に肉片をまき散らした。
「敵歩兵が接近!」
その隙に帝国歩兵部隊も陣地へと接近する。
手榴弾を抜き放ち、特攻を覚悟して、その表情が見えるほど近づいて――帝国兵は左右からの機銃によって薙ぎ払われた。
悲鳴すらあげる間もなく、舞い散った血が雪の塹壕へと張り付く。
「次。左一掃する――砲兵は今のうちに迫撃弾を補充しておいてくれ」
塹壕の隙間から顔を覗かせて、ア
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