一日花
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『儚いよね、一日で枯れちゃうお花なんて。』
たまたま、病院のみんなで行った近所の花がいっぱいのお庭のある家。
3階の病室から見るその庭は、色とりどりの花が咲き誇っていて、
いつか行ってみたいと思っていた。
今日はその花園(は大袈裟か。)に、みんなで来たって訳だ。
たくさんの花が花壇を埋め尽くして、病室で見るよりずっと綺麗だった。
その中で、端のほうに植わっている花を見つけた。
白やピンクの背の高めの花。確かに綺麗ではあるけど、決して派手ではない。
それを見つけた途端、他のどんなに可憐な花たちよりも、私の目にはその花しかなかった。
「あの、これなんていうんですか・・・?」
1つ1つ花の説明をしていたおばさんに思わず声をかけた。
「え?ああ、これ。これはねえ、キスツス・アルビドゥス。午時葵とも言うの。」
「ゴジアオイ?」
最初のやつは何だかよく分からなかったけど、どっちにしても初めて聞く名前だ。
「正午前後の数時間しか咲かないの。日本の気候じゃ不向きの花なんだけどね、
私にはその儚さが魅力的で頑張って調べたのよ。」
「儚さ?」
「ええ。この花はねえ一日花なの。一回咲いたら、次の日には枯れてしまう。」
「え・・・。」
明日には枯れてしまう・・・。
儚すぎでしょ、そりゃあ。
なんかの冗談かと思って、止まりかけた言葉を笑い声で繋ごうとした。
しかし、おばさんの悲しい色の入った微笑みがそんなことはさせなかった。
『儚いよね、一日で枯れちゃうお花なんて。』
儚いよ。儚すぎますよ。
だって頑張って調べて育てた花も、数時間咲いたところを見たら明日はもうない。
でもまた、植えて、咲いて、枯れて。
そのどこに、魅力を感じるかはよく分からない。
しかし私は、この儚さを痛いほど感じることになる。
ということは、もっと先のことだった。
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