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『八神はやて』は舞い降りた
第2章 赤龍帝と不死鳥の騎士団
第21話 誰が為に鐘は鳴る
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昔を思い出していてね。高校生になってから、ヴィータ姉と一緒に過ごせなくて少しさみしいなあ、と)

(うれしいことを言ってくれるじゃねえか)


 高校進学と同時に、彼女と通学できなくなった。
 その理由は――身体にある。


(ヴィータ姉は、成長しないからなあ。成長しないヴィータ姉は、一部で大人気だったっけ)

(うるせえよ。あたしに嫌なことを思い出させるな。はやても変身魔法を解けばおなじだろうが)


 ボクは、いまとおなじように常に変身魔法をつかっていた。
 彼女も、変身魔法をつかえるが、常時展開することはできない。
 向き不向きもあるが、常に人間(しかも成長した姿)に変身するためには、膨大な魔力と緻密な術式、それを運用する技術が必要だ。
 いまでこそ、楽に大人モードでいられるが、必要に迫られ、最優先で努力した成果である。


(はやてちゃんは、必死に努力したものね。実際、高度な変身魔法を維持し続ける技術は、驚異的よ?)

(主はやては、努力家だからな。ヴィータも練習はしていたが、長時間の維持は難しかったようだ)


 ある程度、ボクが身を守る術を会得し、社会的にも自由な行動が許されるようになってからは、家族と共に積極的に仕事をしていた。
 単に依頼を受けるだけではなく、こちらからも、協力を積極的に申し込みもした。


(はやてが異常なんだよ。常に、変身魔法の維持に意識を振り分けながら、生活するんだ。あたしには無理だった)

(日常生活をしながら集中力を維持するためには、何事にも動じない精神が必要だ。主は、鋼の精神をお持ちでいらっしゃる)


 シャマルが臨時保険医だったり、シグナムが臨時剣道顧問だったりするのは、その一環である。
 駒王学園を職場に指定したのは、原作の舞台でとなることを「知っている」ためだ――ボクの護衛が表向きの理由だが、間違ってはいない。


(ボクが「鉄の女」とでもいいたいのかい、ザフィーラ?)

(いえ、そのような意味では断じて――)


 わんこモードではないザフィーラをからかう。
 合宿のときからザフィーラは人型でいることが多い。
 いつもわんこモードで自宅警備にいそしむ彼が、立派になりやがって。
 戸籍や金銭といった面で支援を受ける以上、必要以上に借りを作りたくなかったことが、協力を申し出た大きな理由だ。
 ボク自身、どこかの勢力に肩入れするつもりはない。
 マルチタスクで、家族とのコミュニケーションをしつつも、辺りに意識を巡らす。
 魔王の妹が参戦するだけあって、このレーティングゲームは注目の的らしい。
 大勢の悪魔たち――おそらくは上級悪魔だろう――が、観戦に来ていた。


「さて、事前の取り決め通りいくわよ」


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