誓い
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った。そんなことをすれば、バックにある霧島がどんな具合に攻めてくるか分からない。ただでさえ、今は敵の対処に困っている時期だというのに。
だが、彼は一言二言で了承した。雪子を、雪江の娘を弟子にした。一緒に学園を守ってくれると約束した。他家であるにも関わらず、当主であるにも関わらずだ。実を言えば、左霧の処遇については困っている。雪ノ宮の教師たちは、全て『魔術師』だ。砂上を筆頭に学園に関わる全ての者は『雪ノ宮』の息がかかっている。となれば、左霧にも雪ノ宮に入ってもらうことは必然である。だが、他家の者を取り入れるなどということは先例がない。どうしたらいいか、頭を悩ませていた。
「……む? またか……雪子のやつ、余計な心配をしおってからに……」
雪江は自らの部屋に置いてある全国的結婚情報誌『ゼ○シィ』をゴミ箱へと叩き入れた。どうゆうつもりか、最近になって雪子は急にこんなものをこそこそと置いては、母親の反応を盗み見ている。父親が欲しいのか、と聞けば別に、とか特に、など口を濁すばかり。ならこれは嫌がらせの類にしか感じられないのは、雪江の性格が曲がっているからではない。
どうやら雪子は母を心配しているらしい。この年になっても自らの幸せを顧みない母親のことを生意気にも気を使って行動で示しているのだ。
雪子は自分がいることで雪江は結婚できないと考えているらしい。コブ付きは敬遠されがち、というどこから聞いたのかくだらない与太話を鵜呑みにしているのだ。
馬鹿なことだ。雪江は嘆息した。自分にとっては結婚など財産や権力を絡む、至極メンドくさい儀礼に過ぎない。必然的に雪ノ宮の婿なり逆玉ラッキーとなり、愚かにも雪江に利用され、傀儡となるのが関の山。簡単に想像できる。想像して呆れた、自分の腹黒さに。
「大体、私はもうすぐ五十過ぎだぞ、今さら結婚なぞ……」
そこまでいい、雪江の頭に一つの案が思い浮かんだ。まるで今まで曇天だった天気が、快晴になったように、真っ直ぐに一つの道を照らし出した。
天才だ。分かってはいたが、自分は天才だ。なぜこんないい案が出てこなかったのか不思議でならない。一人でに不気味な笑みを浮かべた雪江。その姿は、誰がどう見ても雪子と重なることを否めない。
「そうと決まれば、早い方がいいな……」
ゴミ箱から嫌そうにゼ○シィを取り出し、雪江は読み耽る。その姿はまるで結婚を間近にした少女のよう――ではなく、おませな少女が自分サイズのウエディングドレスがないことに憤慨している可哀想な姿にしか見えなかった。
「――くしゅ!」
「風邪ですか左霧様?」
「うーん、僕風邪なんてひいたことないんだけどね」
「大事になさってくださいね――馬車馬のように働いてもらうんですから」
「酷いなぁ……くしゅ!」
「ん……ふゅ……
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