誓い
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るわけでもないし、気楽にやればいいと思うのだが、それは凡人の考えてあって、天才の自分の思考は違う。どんな分野でも、例え魔術などというふざけた分野であっても、自分は頂点にいなければ気がすまないのだ。
天才でないならば、秀才になるまでよ。今までの自分という鎧を脱ぎ捨て、雪子はプライドと憧れの為に今日も努力をするのであった。その先にあるものが、一体どんな運命なのか、知るものはまだいない。そして雪子は自分の存在の意味すらも、この時はわかっていなかったのだ。
「光の術など、とっくに潰えたはずなのだが、な」
強大過ぎた力は、滅びの運命を辿る。歴史を見てもその言葉の通りだ。魔術もまた然り。もちろん魔術に歴史などない。古文書に残された薄れた文字と口述により伝えられた言葉を代々その血筋の者に伝承することによって魔術師は成り立つ。名家と呼ばれた家柄の者たちはその封権的な制度を未だに保っているにはわけがある。魔術を、他家に漏らすことがないようにするためだ。魔術師として生まれた人間は、その地点で戦いの中に放り込まれる。どんなに幼くても、か弱くても、戦う。
霧島左霧という男が――正しくは男であって男ではない。ややこしいのでここでは男とする。その男が学園に侵入してきた時は驚いた。霧島の手先だと疑いもした。雪ノ宮を叩き潰すことなど名家の『霧島』なら容易に出来るはずだ。そう思いもした。
「霧島家の嫡男――いや嫡女。ええいややこしいな本当に……まぁ本人が左霧と名乗っているからには男なのだろう。……ふん」
血筋にすれば霧島の当主の座を継がなくてはならない者だ。にも関わらずそんな男がわざわざ学園に求人を出してきた。どう考えても異常な事態。一体何があった。
普通に考えれば別に何の問題もない。性別不明(?)の若者が、教職を目指して就職活動をしていただけだ。たまたま縁があってマリアナ学園――雪江のアジトに潜り込んだだけのこと。
調べたところによると、この男は現在本家とは別居状態にあり、他二名と暮らしながら生計を立てているらしい。妹と従者一名。つまり、本家には今、『霧島霧音』あのおぞましい『霧の女王』しかいないというわけだ。何とも間抜けな話だ。どんな理由があれ、自らの血縁に逃げられ、挙句、敵対関係にある雪ノ宮へと潜り込んでしまったというわけだ。最も、本人は特にそのことに関して気にしていない。雪江からその話題を出そうとも思わない。彼は純粋に教師になりたいという夢を追ってここまで来たのだ。そして雪江は魔術師を探していた。この『学園』を守るために。
「とはいえ、不安要素はかなりあるが……よもや光の魔術とは……霧ではないのか?」
雪江はこの際、雪ノ宮に新たな力を導入するべく左霧――霧島家の魔術を盗んでやろうと思った。無論、無理強いをするつもりなどなか
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