誓い
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かもしれない」
死ぬなどとは大げさな。自分を追い込むような言葉を使い、鍛えるつもりだろう。なかなか師匠らしいではないか。そう思っていた時期も雪子にはあった。ところがどっこい、この男にそんな芸当が出来るわけがないのだ。
「例えば?」
「毎日走り込み二十km。腕立て千回。腹筋五千回。滝行三時間」
「た」
「た?」
「滝行は、無理じゃない?」
「出来るよ。水を魔術で強化して、擬似的な滝行なら」
この男が何を言っているのか分からない。分かりたくもない。あえて言うなら、二つの膨らんだ果実を揉みしだいてやりたい。
「た」
「た?」
「体育会系か!!!」
そんなしょうもないツッコミしか雪子は言葉に出来なかった。あの男曰く、圧倒的に才能がなく、それを補うには『基礎体力』を強化するしかない。基礎体力、とはつまりスタミナ。どんなに優れた魔術師でも、スタミナがなくなれば、ただの人間。つまるところ、魔術師も人の子だということだ。
「はぁ、こんなはずじゃなかったのに……」
雪子は華麗なる魔術師デビューを確信していた。そうなれるほどの自身が胸の内にあった。人の頂点に立つために自分は生まれてきたのだ。そうに違いない、絶対!! だというのに。
「大丈夫だよ雪子さん。君が立派な魔術師になるまで、僕が徹底的にサポートしてあげるから」
「はぁ、ありがとうございます。お手柔らかに」
「うん、明日から死ぬほどキツくなるけど、よろしくね!」
「はぁ、お手柔らかに」
「よろしくねっ!」
「お手柔らかに!!」
ニッコリと満面の笑みを浮かべる師匠。その笑みは凶悪に見えたのは雪子だけではなかったはずだ。そう、明日から、自分には過酷な修行が待っているのだ。
逃げたい。激しく逃げたい。どうして自分はこんなことで悩んでいるのか? だって魔術の勉強なんて、本を読んで呪文を唱えて炎がボッと燃えてわぁすごい! ってなるものだと思っていたのだ。今更ながら自分の頭の中がお花畑だったことに気が付いた。馬鹿雪子! しっかりなさいよ!
「魔術師って、皆こんなに頭がいいの? 信じられない……」
魔道書はちんぷんかんぷん。男曰く、今はそんなに気にしなくていい。ざっと目を通して基本的な内容を理解できれば、だと。基本的な内容? どこにそんなことが書いてあるっていうのよ? クソ重い上に、びっしりと書かれた魔法文字。言葉は理解できるが、内容は理解できない。開始十分で雪子は焼却炉にぶち込んでやろうかと思った。
「ほう、なかなか面白い物を読んでいるな」
「……ひゃ! お母様! いつ入ってきたの!?」
「クックック、魔術師なら当然これくらい簡単だ」
「勝手に入ってこないでください! いくらお母様でも怒りますよ?」
いきなり雪江が後ろから
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