誓い
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財宝よりも、たった一つの大切な命。私はお前を愛している」
「お母様……」
「だから、お前は何も心配しなくていい。言いたいやつには言わせておけばいい。どんなに愚かでも、賢くても、醜くても、美しくても、お前は私の娘だ」
そっと小さな両手で抱きしめられた。母の温もりに、優しさに、大きさなど関係ない。血の繋がりない自分を、どうしてここまで愛してくれるのか。我侭な自分をどうして慰めてくれるのか。それは、雪江にしか分からない。だが、その思いは、確実に雪子の胸の奥まで行き届いていた。
「わかった。私、強くなる!」
「雪子……」
「強くなって、お母様みたいに男も従わせてやるわ! そして皆、私にひれ伏すの! ああ、なんて素敵な夢なのかしら!」
「ん? んん? ……まぁいいか。元気なら」
「オホホホホホホホホオホホホホホホホ!」
「クックックックックックック!」
「オホホホホホホホホホホホホホ! げほっげほ!」
「クックックックックックックッ! おぇ!」
雪子はベッドで高笑いし、雪江はそんな我が子を褒め称えた。結果的に雪子はとても強くなった。精神的にも肉体的にも頑丈になった。この国に飲み込まれないこと。それが自分の宿命なのだと、言い聞かせながら。
「だってのに、だってのに!」
魔道書を放り出し、深くベッドに沈み込んだ。何をそんなに苛立っているのか、それは明白だ。ひとえに、自分のせい。
「全く、召喚出来ない……」
約、一ヶ月。雪子は霧島左霧の家に通い詰めた。昼間の気だるい授業を我慢し、疲れの残る放課後の秘密授業へと、毎日休まずに。であるのに、未だ、雪子は魔術師としてのスタート地点にすら立てないでいるのだ。
「大丈夫だよ雪子さん。焦らないで!」
そう言っていたあの優男も、日にちが経つにつれ、遂に、
「才能、ないねっ!」
と笑顔で突き放した。信じられない。私が? 才能がない? あらゆる技能で、溢れんばかりの神童ぶりを披露してきた私が? 目の前が真っ暗になった。
雪ノ宮雪子は、魔術の才能がない。ないったらない。これっぽっちもない。
ちなみに初回で悪魔を召喚出来たのは、あの『悪魔の書』のおかげで、あれ単体があればどんな人間でも簡単に悪魔を召喚出来るのだ。場所さえ選べれば。つまり雪子の才能は全く関係ない。
「ふふふふふふふふふふ……嘘よ、私が、嘘よ……」
別に手を抜いていたわけでない。成り行きとはいえ、自分に魔術の才能が多少なりともあると言われたときは、嬉しかった。危険だと言われても興奮した。今回もぱぱっと天才ぶりを発揮してさっさと魔王になって、あの男の契約を解消してやるんだ。そう思っていた。
「努力、しろというの? この、私が?」
「うん。それも死ぬほど苦しくなる
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