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魔導兵 人間編
私は何者
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に――――平凡ではない、金があり権力があり、あらゆる贅を尽くしてきた箱入り娘が(自分ではそう思っているらしい)これから未知の世界へと足を踏み入れるのだ。その道筋には、おそらく想像もできない恐怖が待っているかもしれない。普通に過ごしていれば、絶対に体験することのない恐怖。
 ――――あの悪魔の襲われた時のように。
 だけど、だけれども。

「私は、どっちみち危険なんでしょう? お母様から聞いたわ。私の魔力量は年々増え続けているのよね」
「うん……君の『体』は魔力を欲している。今回の事件も決して雪子さんだけの責任じゃない」

 雪子はあの日、母から様々なことを聞いた。自分の体は、無意識に魔力を求めていること。魔術師は互いに争い、自らの強さを求めること。そのためならあらゆる犠牲もいとわない、悪辣な魔術師も存在すること……。

「先生、私、魔王にならなくちゃいけないの?」

 魔王とは――――
 決してファンタジーの世界に存在する、悪の帝王ではない。
 魔術師の頂点に君臨者。そこに行き届いた者は、一年に一つだけ神に願いを叶えてもらえる。どんな願いでもいい。死んだ人を生き返られることも、大金持になることも可能なのだ。
 なぜ、魔術師たちが魔術師と争うのか、それは魔王になるためなのだ。魔王は実力主義で、一年の終わりまでにその魔王を倒し、自らを魔王と名乗り上げれば、その年から倒した者が魔王になる。魔王になれば願いを叶えてもらえる。
 何とも、怪しいシステムだ、と最初雪子は思った。それもそうだ。人が苦労して築き上げた権力も財力も、魔王になれば何なく手に入れられる。雪ノ宮が雪江を欲したのもそのためなのだ。最も、雪江はそんなものに興味はない。神という存在が大嫌いなのだとか。何とも母らしいと雪子は苦笑した。

「君に、叶えたい願いがあるのなら」

 左霧は端的にそう言った。まるで自分には願いなどない、とでも言いたいかのように。
 雪子を弟子にしたということは、自分は魔王になるつもりがないということになる。魔王になりたい者なら、むやみに魔術師を増やしたりなどしない。あくまで彼は雪子を危険から守るために術を教えてくれるつもりらしい。

「願いねぇ……私、お金持ちだから特に欲しいものはないけど」
 けど、一つだけ、あるのだ。自らが犯した責務は、自らで拭わなくてはならない。雪ノ宮雪子、最大の過ち。本当に魔王になれば、叶えられるのならば自分は彼に果たさなくならないことがある。

「そうね、悪魔の契約とやらを解いてもらいましょうか」
「え……?」
「だってあんたは魔王にならないんでしょう? だったら私が魔王になってあんたの契約を解いてやるわ。まぁ私の方にも多少なりとも責任がなくもないわけだし? やってやるわよ、ええ」

 長い黒髪をバ
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