闇の死者
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のように笑い出した。
「いい。実にいい。取引をしよう魔術師!」
「取引? 悪魔とか? からかっているのか?」
「貴様にとっては悪いことではないはずだが? この場は見逃してやる。だが、その命尽きるとき、貴様の魂は俺がもらうことにしよう」
「……なっ……」
「だ、ダメですよ先生! 悪魔と取引なんて、わ、私が」
「お前のような小娘の命、もらったところで何の価値もねぇ。黙ってな小娘」
凄んだ悪魔の言葉に再び怯えてしまった雪子を守るように左霧は悪魔を睨みつけた。
「まさか、その小娘を庇って、この俺の結界を潜り抜け、尚且この俺様を倒せるなんて……思っているわけないよなぁ?」
内心、左霧は焦っていた。勝算などあるはずがなかった。自分は人間で、悪魔は高等種族。その力の差は歴然としている。例え、自分が『魔術師』であろうとも――――。
それに、雪子を危険な目に合わせるわけにはいかないのだ。そのことが、左霧の天秤を素早く傾けた。
「……いいだろう。その契約、結んでやる」
「先生!?」
「大丈夫だよ雪子さん、何も心配いらないから」
「でも! でも!」
「ウワハハハハハハハハハハ!! いいだろう魔術師! 第六級悪魔、『ヴェルフェゴール』が貴様の命貰い受ける! 死のその時まで楽しみに待っているがいい!」
雪子の泣き出しそうな声をかき消すように、高々とヴェルフェゴールは笑い出した。左霧の心は静かだった。不意に彼女の声が聞こえたような気がした。構いはしない。自分はどのみち――――。
「……なぜ、僕の魂を欲する?」
どこからか、書類を取り出した悪魔は、左霧を片目で盗み見たあと、深刻な声で呟いた。
「……王が欲しているからだ。上等な兵隊を、な」
それに、と悪魔は書類を書き上げ、指でサインをくれとはやしたてた。左霧は口で親指をかんだ後、血の滴る指をしっかりと書類に押さえつけた。その様子を、ただ雪子は黙って見つめていた。
「それに、貴様からはどす黒い気配を感じる。こりゃ掘り出し物だ」
ふざけたことを! 左霧は悪魔を鋭く睨みつけた。だが、これ以上この悪魔を刺激するのは危険だと判断した。悪魔は約束をしっかり守るというが、悪魔だけに信じられた話ではない。まるで悪徳業者に無理矢理サインを書かせられたような嫌悪を感じる。
「用が済んだのなら、さっさと帰ってもらうか」
「っけ! 誰が好き好んでこんな魔力のすくねぇ薄汚れた場所にいたいと思うか! だが、まぁ今日は気分がいい。この次はてめぇの命が尽きる時に現れるが……間違っても天使と契約を交わしてみろ? お前の大事なもんを根こそぎ奪いに来てやるからな!」
大事そうにその書類を封筒に入れ、悪魔は遂に次元の裂け目から去っていった。と同時に辺りからいつ
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