闇の死者
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計画は変更だぁ! まずはてめぇをぶっ殺す!」
悪魔は嬉々として飛び上がる。狭い室内はまるで砂塵が渦を巻いたように騒然とし、二人の衝突が始まった。
雪子はその光景を呆然と見ていた。逃げることができない。今自分が動いたらそれこそ命の保証がないと思った。いや、それ以前に何だ? なんなのだこれは? 自分はまだ夢を見ているのではないだろうか。ゲームのやりすぎ? 雪子の頭は襲いかかる非現実な出来事に混乱していた。
まるで映画のワンシーンだ。悪魔が勢いよく鎌を振り下ろし、それを左霧が不思議な力で受け止める。あれはなんなのだろう。人間なのか? 彼は本当にただの先生なのか?
「さっさとくたばれクソ魔術師がぁ!」
悪魔は思い切り鋭い鎌を振り上げた。これを普通に喰らえば真っ二つに胴体は切断され、殺されるだろう。悪魔に魂を狩られる。それはつまり、悪魔界へ売られることを意味する。
「なぜ、悪魔が今、魂を欲しているかは知らない……けどやられるわけにはいかない」
左霧は精神を集中させ、呪文を唱えだした。それは失われた言霊。あるはずのない文字。神秘を表す魔術の型。
光が収束する。一つの球体に形取り、左霧の手から一気に放出された。
「消滅せよ!! 光爆!!」
「ちっ……!」
悪魔の中心めがけて放たれた必殺の一撃は、光粒となり降り注ぐ。まるでマシンガンで打たれたように悪魔は吹き飛ばされ瓦礫の下敷きになった。
「雪子さん! 大丈夫!? 怪我はないかい!?」
先ほど戦っていた左霧は、慌てたように雪子の安否を確かめた。固まったように左霧の顔を見たまま動かない。あの光景を目撃したのなら、当たり前だ。
「……今は詳しく話している暇はないんだ。とりあえずここを出よう、ね?」
「……せ、先生、わ、私……」
「うん、怖かったよね。大丈夫僕に任せて! 僕が君を――――守るから!」
守るから! その言葉を雪子は生涯忘れることはなかった。決して恋に落ちたわけではない。だがこの時に放たれた言葉は、何よりも力強く、自分の心に残っていた。まるで弱さを吹き飛ばしてしまうような綺麗な笑顔。大丈夫と思わせるような雰囲気を、彼は纏っていたのだ。
「……そうか、だからこんなところに悪魔が……」
「ゴメンなさい先生、私……とんでもないことを」
雪子は涙ぐみながらその顔を手で覆った。長い黒髪ははらりと崩れ落ち、やつれているようだった。左霧はその気持ちを労わるように優しく体を抱きしめた。
「せ、先生?」
「確かに君はいけないことをした。だけど、ここにいる悪魔はどのみち放っておくわけにはいかなかった。だからといって君が反省しなくていいというわけではないけど」
抱きしめられて恐縮してしまった雪子にまたあ
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