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魔導兵 人間編
電話
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そして命の危険すら感じる今日この頃の左霧。

「それに比べて桜子様は本当に素晴らしいです! どうして妹君がこのように完璧に出来てしまったのでしょうか? どこかの兄が哀れでたまりません」
「んー? お兄様はすごいよー?」

 何のやり取りをしているのか分からず、桜子は顔を米粒だらけにしながら左霧と華恋のやり取りを見ていた。桜子がとりあえず兄のフォローを口にすると、華恋はすかさず「いけません!」と左霧の印象を悪くしようと必死だった。必死で桜子の口元について米粒をとっていた。

「お兄様は凄いよー、だって桜子たちはお兄様のおかげご飯を食べられるんだよー? もぐもぐ……」
「桜子……」
「桜子様……でしたらもっと上手にご飯を召し上がれるように頑張りましょう」

 どれだけ誰かに非難されても兄である左霧を尊敬している桜子。左霧自身、妹にそこまで尊敬される人物でないため、断言されると苦笑しか出ない。だが、その期待があるからこそその期待に答えられるように頑張ることが出来るのだ。




「左霧様、今日のご予定は?」

 洗い物は基本的に左霧や桜子も手伝う。桜子が食器を運び、左霧が水洗い、華恋が拭く係と決まっている。華恋は「家事は私に任せてください」と断っていたのだが、左霧自身が、

「僕は君を下働きさせるつもりはない」

 と珍しく強い口調で押し通されてしまい、役割分担も決められてしまった。この男は一見ナヨナヨしている風に見えるのだが、たまに頑固で一度決めたらなかなか譲らない性格なのだ。華恋もそれがわかっているので、彼の優しさに甘えることにした。

「左霧様、まだ春とは言え、お水が冷たくありませんか? それに手が荒れてしまいますから、私が」
「華恋ってば、僕は男だよ? 手が荒れたくらい何ともないよ。それより華恋こそ女性なんだから水回りは僕に任せて。せっかくの綺麗な手を傷つけなくない」
「…………左霧様」
「ん?」
「私を口説き落とそうなどと、百万年早いですよ?」
「……何の話?」
「……何でもありませんクソご主人様」
「華恋? なんで怒っているの?」

 華恋は左霧の質問に答えるつもりはないらしく、無言で食器を拭いていた。さっきよりも強く、壊れそうなくらいゴシゴシと。

「お兄様、食器は全部運び終わりました!」

 元気よく桜子は敬礼で仕事の終わりを告げた。その敬礼は角度や仕草がヘニャっとなっているところがチャーミングだと華恋は鼻血を出しながら訴えていたことがあった。左霧も否定はしなかった。華恋は桜子を溺愛し、左霧はシスコンだから。

「よし! じゃあ出かける準備をしようか!」
「はーい! お兄様、今日はどこに連れて行ってくださるの?」

 桜子は待ってましたとばかりに左霧の腕を両手で掴み
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