花も恥じらう
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やら砂上は年のことネタにされることが多いようだ。自が出てしまったことを恥じるように顔を赤くする砂上だったが、左霧自信は人気者なんですね! と尊敬の眼差しを向けるだけだった。純粋とは、時に恐ろしい。
「彼氏……じゃなかった、彼女はいますか?」
当たり前のようにそんな質問が飛び交った。周りからは黄色い悲鳴が上がり、場も最高潮に達している。が、一人だけ瞳孔が開いたように左霧を見つめる熱い眼差しがあった。もちろん、砂上教論である。こういう仕草をするから生徒からからかいの対象になるのだと、本人はまるで気づいていない。
左霧はニコニコしながら、
「秘密です」
と言うのだから周りは色んな噂を交わし、あるいは妄想することが出来る。当然、行き遅れの方は地団駄を踏んでいることに、生徒たちも気づいている。気づかないふりをしている。
趣味は? 家族は? どんな食べ物が好きですか? 好きな女性のタイプは? 好きな男性のタイプは? 薄い本に載りませんか? いっそBLになったらどうですか?
途中から収集がつかなくなるような大惨事になったが、答えられる限り、左霧は気持ちよく答えた。従って、彼の対面は大成功と言えるだろう。
「とても元気のいい生徒さんですね! 僕ビックリしました!」
「ふふ、そうでしょう? お嬢様なんて信じられないくらいよね」
職員室に戻った左霧は、先ほどのクラスの熱狂を興奮気味に話していた。砂上は長年勤めているだけあって態勢があるらしい。だが、今年は去年を上回るほどの賑やかっぷりに面食らっていることを隠せない。
「私も一週間くらい前にあの子達に会ったばかりなんだけど、今年はかなりクセ者ぞろいよ。霧島先生、一緒に頑張りましょうね」
「はい先輩! よろしくお願いします!」
「ところで、年上の女の人って霧島先生的にどんなポジション?」
「はい?」
意味の分からない質問をここでもぶつけられ、左霧は戸惑っている。質問時間はもう終わっているし、今までの中で彼女の質問が一番意味不明であった。
そんな左霧の反応に、イライラしながら、仕事中に関わらずとんでもない質問を更に続ける砂上。
「年上の先生は好きですか? 嫌いですか! あいた!」
「仕事中だ砂上、新任にセクハラするな」
砂上は教頭先生に書類で叩かれ注意されてしまった。教務室から微笑する声が聞こえる。緊張感と程々の暖かい空気が、左霧は気に入った。だが、教頭先生と砂上はかなり仲が悪いらしい。さっきから、ハゲ死ね失せろ邪魔すんなと小さく呪っている砂上の声は、聞かないことにした左霧だった。
「諸君! おはよう!」
バン! と戸が壊れるくらいの音を出し、隣の部屋から小さな少女――――雪ノ宮学園長が姿を現した。
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